高給ホテルのレストランVIPルームを後にした二人は、なんとなく照れ臭い想いで並んで歩いていた
『チェギョン・・・俺は別に新たな誕生日プレゼントなどいらない。』
『えっ?でも・・・あの時ご馳走になっちゃったし・・・いつも送迎してくれてたし・・・』
『あの時のパーティーの主催はお母様だ。それに送迎は俺が好きでしていたことだから、気にしなくていい。』
『好きで///・・・していたこと?』
上目遣いでじっと見つめるチェギョンに、シンは人差し指で自分のこめかみを掻きながら誤魔化すかのように言う
『あの時貸した治療費は返して貰うからな!』
『あはは…それは当然♪でも本当にあれだけでいいの?』
『あぁ。俺にはこれがあるからな。』
シンは今日着ているスーツの胸ポケットから、少しだけポケットチーフを覗かせた
『あっ!これって・・・』
『あぁ。チェギョンがあの時くれたポケットチーフだ。』
『使ってくれたんだ~♪てっきり箪笥の肥やしになっているかと思ってた。』
『そんなことはない。』
既に誕生パーティーの時に、シンの気持ちは走り出していた
チェギョンから貰ったプレゼントをぞんざいに扱うはずもなく、ポケットチーフを収納している引き出しに
特別扱いで置かれていたのだ
『とにかくシン君・・・ちょっとお買い物に行こうよ。』
『あぁ?何を買いに行くんだ?』
『シン君のシャツとジーンズ。そのスーツ・・・目がチカチカして落ち着かない。』
『くっ・・・相変わらず無礼な女だな。ニャオールに悪いと思わないのか?』
『そりゃあ悪いとは思うけど・・・(そんな有名ブランド品だったんだ・・・)とにかく行こうよ~~!』
チェギョンはシンの手を引っ張り、ホテルの向かいにあるデパートに向かった
そしてやはりシンの行きつけの店はチェギョンには敷居が高く、会計の際おずおずと紙幣をシンに差し出した
『えっと・・・シン君、そのTシャツだけでも私が払う。』
『いいよ。プレゼントはまた来年貰えるから。』
『本当?後で後悔しない?』
後悔するはずもない・・・シンにとってみれば大した金額ではない
『あぁ。』
着てきたスーツ類をその店の紙袋に入れ、ポケットチーフだけはジーンズのポケットにしまったシンは
チェギョンと共に車に乗り込んだ
もうすっかり慣れてしまったシンの車の助手席・・・
シンは車のエンジンをかけながらチェギョンに言った
『もうその包帯とっても大丈夫なんだろう?とれよ。』
『うん。』
素足にサンダルを履いてきたチェギョンは、前屈みになると長い間巻いていた包帯を解いた
『傷は残っていないな。』
『大丈夫。』
チラと横目で傷跡を確認すると、シンは車を発進させた
こんな昼間の時間帯にシンの車にあまり乗ったことのないチェギョンは、なんだか胸を高鳴らせながら
本日の衝撃的な見合いに思いを馳せた
『まさか・・・ばあやさんがシン君の言っているお母様だとは思わなかった。』
『何度も顔を合わしていただろう?』
『うん。お宅にお邪魔した時、いつも勝手口のお部屋にいらっしゃったし・・・あ~そうそう!
最初お邪魔した時自転車で転んだ私を送ってくださったのも、シン君のお母様だった。
それに・・・ファミレスにも来てくれたんだよ。』
『なにっ?あのファミレスに?』
『うん。ご主人・・・つまり財閥の総帥もご一緒だった。よく考えたら・・・私、とんでもなく失礼な娘だよね。
なのになぜ見合いをセッティングしたんだろう。』
『その理由については、お母様自身がさっき話していただろう?
お前の事が・・・その裏表のない性格がとても気に入ったんだと。』
『でもさ~~おばさんとか~ばあやさんって呼んでいたんだよ。普通怒らない?』
『そうだな。他の娘がそんな失礼なことを言ったら、お母様は烈火の如く怒ったことだろう。
≪なんて失礼な娘なの~~!≫なんて目を吊り上げてな。』
『なんかとても不思議・・・そうそう!よく考えたら、初めてシン君の家に行った時・・・
パーティーで出されていたお肉や野菜をご馳走してくれたの。≪召し上がれ≫って・・・』
『そうだったのか。あの時・・・お前が道路から転落したとギョンから連絡が来て、俺が車を出そうとした時
≪あなたはお酒を飲んでいるでしょう?私が行くからいいわ。≫って自転車が積める車で
チェギョンを救出に行ったんだった。今思えば・・・お母様の一目惚れだったのかもな。』
『一目惚れ?私に?』
『あぁ。そうとしか考えられない。あの時に来ていた取り巻きの女たちなど、
すごい剣幕で追い返されたからな。』
『そうかぁ・・・』
『あぁ誕生パーティーの時には≪しもべちゃんを呼んでお手伝いして貰ったら?≫って
お母様から言われたんだ。』
『でも実際お手伝いすることなど何もなくて・・・お皿洗いさえさせてもらえなかったよ。
あ・・・そうそう!あの時、シン君に料理を盛りつけて来いって言われたでしょう?
シン君に持って行ったら、お前が食べろって言われたけど・・・あれね・・・おばさん・・・
あ~もうおばさんって呼ぶのは失礼だな。おば様に改めよう。
おば様に持って行ったんだ。勝手口のお部屋に一人でいらっしゃったから・・・
そうしたら盛り付けを褒められたんだよ~~♪
あぁそうかぁ~ドリンクバーの機械も、おば様の鶴の一声で決まったんだね。』
『くくくっ・・・あれか?ファミレスに通って相当気に入ったらしいな。業者を呼びつけて価格競争させたらしい。』
『そうだったんだ~。誕生パーティーの時・・・おば様、すごく自慢げだったもん。あはは~♪
ところでシン君・・・私達、出逢いがよくなかったでしょう?この状況・・・どうしたらいいの?』
車の運転中に核心をついた質問を投げかけるチェギョンに、シンは苦笑しながら答えた
『俺は・・・お母様がくれた子のチャンスを無駄にする気はない。しもべの契約は解消してやる。』
『えっ?あの時のスーツを汚した罪を許して貰えるの?』
『あぁ今後は無理難題は言わない。』
『そう・・・なの?』
本音を言って・・・シンに振り回されるのが癖になってきたチェギョンは、少し落胆する
『その代わり新しい関係を構築しよう。』
『構築?』
『あぁ。しもべとしてじゃなく・・・ちゃんと付き合おう。これは強制ではない。お前が望めばの話だ。』
『望んで…いいのかな。』
『何のために見合いしたんだ!』
『そうでした~、付き合う♪』
『本当か?』
『うん。』
『じゃあ今度は・・・俺がお前のしもべになる。』
『へっ?・・・』
『お前は気づいていなかったかもしれないが、もう今でも十分・・・俺の方がしもべのようなものだろう?』
『あ・・・そう言われてみれば確かに・・・』
『夏安み期間のバイトが終了しても、お前を迎えに行く。』
『えっ?そんなのシン君の負担になるよ~~!』
『お前が暗い夜道を自転車で帰宅することを思えば何でもない。』
『それじゃあ本当に・・・私のしもべだよ。』
『お前には今までいろんなことをさせられた。だから、今更そのくらいのことはどうってことない。』
『好きになっても・・・いいのかな?』
『お前は俺が好きじゃないのか?』
『好きです。すご~~く好き♪』
『くくっ・・・俺も同じ気持ち・・・だ。』
しもべという理由を取り払っても一緒にいられる環境に幸せを感じながら、シンは車を走らせ
チェギョンはハンドルを握るシンの横顔を見つめている
『それでシン君・・・今夜見合いの報告の電話する?』
『くくっ・・・馬鹿か。見合い相手はこの俺だったんだ。これから用事がなくても電話する。』
『うん。私も電話する~♪』
『あ~そうだ。ギョンにも報告しないとな・・・』
『あ!私もガンヒョンに報告しなくっちゃ~♪』
『ところで・・・ひとつ聞きたいんだが、ガンヒョンはギョンをどう思ってるんだ?』
『う~~ん・・・あのね、シン君とギョン君は女性客に人気があるの。
だから休憩時間にはいつも二人の悪口を言ってたよ。、』
『何っ?悪口?』
『うん。女性客から騒がれるのが面白くないの。』
『つまりそれって・・・』
『嫉妬かも~~♪』
『くくっ・・・ギョンはともかく、俺は女性客に優しくなどしない。』
『その優しくないところが魅力らしいよ。』
『そんなことを言われたら、俺は一体どうしたらいいんだ?』
『名札のところに≪売約済み≫って書いておく?』
『くくくっ・・・それはいい案かもしれないな。』
『もぉ~本気にとらないでよ。』
『とにかく・・・俺が優しくできるのはお前だけだ。』
『///うん///』
『お前も男性客にあまり愛想を振りまくなよ。』
『うん!そんなことしないよ~♪』
今まで話せなかった心の内を打ち明けられた二人・・・車はシンの行きつけのレストランに向かっていった
そしてレストランで・・・何かが起こるのです。
もう~暑いのか寒いのかよくわからない天候です。
雨が降っていたと思ったらピーカンになって
またすごい雲行きになってきました。
明日は皆様・・・どうぞご注意くださいね。
で・・・そんなアタクシは
今朝ナスにお水をあげていて
また・・・腰をやってしまいました。
あまり痛かったら、お返事明日のさせてください~~!