その年の年末、皇室広報部は第四皇子のシンが皇位継承者になる事を正式に発表し
それと同時に王族であるシン家の娘チェギョンとの婚約も発表された
だが・・・その発表によって蚊帳の外に追いやられた王族は、穏やかな心情ではいられなかったようだ
今まで平穏だった王族の中に不穏分子が動き始めようとしている
王族の中でも力を持っているホン家では、娘のユリが皇室広報部の発表を唇を噛み締め涙を浮かべ見つめ
一人呟いていた
『どうして?どうして私がシンオッパの妃になれないの?
私は幼い頃からシンオッパの妃になれるって信じていたのに。
先皇帝陛下の遺言?愛の無い結婚をシンオッパは強いられようとしている。
私が・・・シンオッパを救わなきゃ・・・シンオッパが可哀想。』
ホン・ユリ・・・確かに王族会の娘達の中で、誰よりもシンの傍に居た娘である
だがシンにとっては可愛い妹のような存在でしか無く、女性としてユリを見た事は一度としてなかったのである
それだけにユリの一途な想いは、時に狂気をはらんだ行動へと駆り立ててしまうのであった
新年・・・高校生活最後の学期を迎えたシンとチェギョンは、昼休みいつものように一緒に食事を摂っていた
『なぁ・・・周りの反応はどうだ?』
『周りの反応?ん~~いつもと変わらないよ。』
『そうか。だったら良かった。』
『シン君は違うの?』
婚約が発表されて以降、チェギョンはシンの事をシン皇子からシン君と呼ぶようになっていた
『若干な・・・皇太子って言う肩書がついたから、教師の態度とかは変わったかもしれない。
俺の事を殿下と呼ぶようになった。くくっ・・・
まぁ皇太子だろうが無かろうが、皇子である事に変わりはないがな。』
『あ~~そう言う意味だったら、私に対する先生の態度もちょっとだけ違うかな・・・
でも特別扱いなんかされないよ。されても困るしね~~えへへ~~♪』
『卒業式が済んだら婚礼の儀だろう?お前・・・お妃教育は完了しているのか?』
『それに関しては・・・私だけじゃなく他の四人も完了しているよ。いつお嫁に行ってもいい様に
子供の頃から教育を受けてきたからね。』
『意外だな・・・漫画ばかり描いているかと思っていたが。くくっ・・・』
『シン君!失礼ね~~!!シン家の五姉妹は、皆できる女なんだからね~~!!』
『他はともかくお前は不安だな・・・くくっ・・・』
『ちっ・・・酷すぎるっ!』
痴話喧嘩をしながらも実に楽しそうな二人である
食事が済んだ時、シンはチェギョンに話しかけた
『ところで・・・新作は描いているのか?』
『うん。描いているよ。』
『見せてみろ。持って来ているんだろう?』
『うん。これなんだけど・・・・』
チェギョンは鞄の中から新しく描いている漫画の原稿を取りだすとシンに手渡した
『どれ・・・』
シンは長い脚を持て余したように組み、その膝の上に原稿を載せぱらぱらと捲って眺める
その様子をドキドキしながら見つめているチェギョン
自分でさえ気がついてしまった主人公男子の雰囲気・・・必死に髪形などをシンと違うように描き直してはみたが
ひょっtoして悟られてしまうかもしれない
いや・・・悟られようが悟られまいが、その気持ちは真実なのだが・・・どうも自分の方が熱を上げている感がして
チェギョンにとっては非常に癪に障るのである
『なぁシン・チェギョン…お前って、そんなに俺が好きか?』
『えっ・・・・・』
シマッタ・・・ばれてしまったとチェギョンは視線を泳がせた
そしてその後の返事が出来ずに俯いて緊張のあまり唇を何度も噛んでは舐めるを繰り返す
シンはチェギョンのそんな様子を見て、自分の解釈は正しいと口角を上げた
『くくっ・・・何をそんなに動揺する?この漫画に描かれている皇子は俺だろう?』
『えっ?ちっ・・・・違うしっ!!』
『嘘つくな。じゃあ・・・このヒロインはお前じゃないと言うのか?』
皇子と並んだ妃の姿は、まるで自分自身だった事に気が付く
皇子にばかり気を取られ、妃に関してはまるで自分に生き移しである事に全く気がつかなかったチェギョンである
『ん~~。。。。』
困って俯いたままのチェギョン・・・シンは笑いながらソファーから立ちあがるとチェギョンの元に行き
その隣に腰掛け、赤く染まっているチェギョンの顔を覗き込んだ
『どうなんだ?』
『なっ・・・何が?』
『そんなに俺のことが好きなのか?』
追い詰めてくるシンをチェギョンは横目で睨みつけると答えた
『知らないっ!!』
『くっ・・・正直に言えよ。でも・・・あまりプライベートなことは公表してくれるなよ。』
『プライベートなことって?』
『結婚してからのこととか・・・・それは内緒だ。』
『う…うん!もちろん秘め事なんか・・・絶対にヒミツ❤』
『ばっ・・・馬鹿っ!そんなの絶対に内緒だ。分かったな!』
『うん~~❤』
『口止め料だ。』
シンはこの一見大胆でとんでもない事を言いだす婚約者の肩に腕を回すと、その顎に手を添え自分に向かせた
『口止め…料?んんんっ・・・』
そのまま塞がれたチェギョンの唇・・・三度目のキスはチェギョンの唇を割って深く浸食して来る
シンの皇子ルームに甘く響くリップ音はチェギョンの耳をくすぐる
漸くその唇を離した時、シンは目を伏せたチェギョンの耳元にそっと囁いた
『あと二カ月もしたら俺達は夫婦になる。慣れておいた方が・・・いいだろう?』
『あ・・・うっ・・・うん。』
シンは照れて赤く染まったチェギョンの顔を自分の胸に押し当てると、きつく抱き締めた
ゆっくり愛を育む時間もなく婚礼を迎える二人だが、シンの中でもチェギョンはもう特別な
愛しい人になっていたのである
その日、シンが公用車に乗り込み宮に戻って行こうとした時だった
学校の正門を出たところで公用車の前に飛び出した一人の他校生徒
イギサが急ブレーキで停車した為、その人物にぶつかる事はなかったが
その他校生徒は転んで怪我をしたようである
その他校生徒を助け起こし怪我の状態を確認したイギサは、その人物が見覚えのある少女である事に
気が付き驚いたようだ
『ホン・ユリ様・・・』
後部座席に乗っていたシンも、その少女に気がついた様である
『ユリ・・・ホン・ユリじゃないか?』
『シンオッパ・・・』
『どうしたんだ?うちの学校に来るなんて・・・』
『シンオッパに逢いたくて来ちゃったんです。シンオッパ・・・転んで足を怪我しちゃいました。
東宮で手当てしていただけませんか?』
『あぁ構わない。早く車に乗るがいい。』
ホン・ユリは笑顔を浮かべ、転んだ足を引き摺りながらイギサの手を借りシンの隣に乗りこんだ
(やっぱり・・・シンオッパの隣は私の物。遺言状で結婚なんて・・・今時ナンセンスだわ!)
シンを絶対に手に入れようと心に決めたホン・ユリ
地位や名声の為じゃない純粋すぎるユリの想いは、婚礼を控えた皇太子とその婚約者の間を壊してやろうと
動き始めた様である
えへへ~~♪
そうよ新年早々イケズな管理人よ~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
コメントのお返事は遅くなってしまいますが
どうぞよろしくお願い申し上げます~~★