その日・・・東宮に戻った時、なんとなく不機嫌そうなチェギョンの様子を目にしたシンは、
夕食時チェギョンに問い掛けた
『チェギョン・・・ご機嫌斜めなのは、ひょっとして俺が学園祭のミスターにノミネートされたからか?』
『違うしっ!』<しゅぴーん!>
間髪を入れず棘が起き上がる音を聞いたような気がしたシンは、チェギョンのご機嫌取りを試みることにした
『だったらいいのだが・・・。まぁ俺が選ばれることはないから安心しろ。』
『だから違うって言ってるじゃん!!』
<しゅぴんしゅぴーん!>
藪蛇だったことに気が付いたシンは、どう話題を変えようかと思案する
だが・・・
『もうお腹いっぱい。私・・・これで失礼するね。』
『ちょっと待てチェギョン・・・俺の部屋で少し話を・・・』
『今日はもう疲れて眠いから・・・シン君おやすみなさい。』
折角の楽しい夕食の時間を無駄に終わらせてしまったと、反省しきりのシン・・・
取り付く島もないチェギョンは、棘を出したままシンに背中を向け食堂を出て行ってしまった
(やはりチェギョンは俺がノミネートされたことが面白くないのだろう。
明日学校長に辞退を申し出よう。)
本当はミン・ヒョリンが逢いに来て、シンとダンスを踊ることを許可してしまった自分が情けなかったのっだが
チェギョンはそのことを口に出せずにいた
とうの昔からシンを想っていたミン・ヒョリンへの・・・罪滅ぼしのような気持ちが強かったのだ
だがやはり・・・シンが正式な夫となった今は、どんなに我慢しようと思っても無理な物は無理だった
(あ~なんか疲れた。もう今夜は早く寝ちゃおうっと・・・)
チェギョンは自分の部屋で頭まで布団を被り、眠りの世界に逃げ込もうとしていた
翌日・・・登校していったシンは、教室にカバンを置きその後学校長のところに向かった
<トントン>
『三年映像科特進クラスのイ・シンです。失礼してもよろしいでしょうか。』
『どうぞ入ってください。』
シンはその扉を開け中に入って行くと学校長に会釈した
『校長先生・・・実はお願いしたいことがあるのですが・・・』
『皇太子殿下が直々に私に逢いに来られるなんて、一体どのようなご用件でしょう。』
『実は学園祭のミスターのノミネートを辞退させていただきたいのです。』
『えっ?なぜです?今年はご婚姻も成さり、ミスターに誰よりもふさわしいお方と信じておりますが・・・』
まさか妻が気を悪くするからとは、口が裂けても言えないシンだった
『いえ・・・一国の皇太子たるものが、あまり浮かれていては良い印象をうけませんから・・・』
『浮かれるだなんてとんでもないことです。はっ!そうでした。私としたことが片手落ちでしたね。
では妃殿下もミスにノミネートさせていただきましょう。』
『あ・・・いやそれは・・・』
『妃殿下はとても愛らしくていらっしゃいますから、きっとミスに選ばれるに違いありません。』
皇太子との一件が浮上するまで、別段目立ったところもなかったシン・チェギョンを学校長が細かく知る筈も無い
『いや・・・私はノミネートの辞退を・・・』
『もうすでに発表されております。どうかご協力ください。
後夜祭にお二人のダンスが見られることを楽しみにしております。』
その後・・・教師が急用があると入室したため、シンはノミネートを辞退するどころか大舞台にチェギョンを
引っ張り出す結果となってしまった
(なんてことだ。最悪の事態だ・・・)
ノミネートを辞退するつもりで行った学校長の元だったのに、まさかチェギョンまでノミネートさせられる
羽目になるとは・・・
シンは痛む頭を抱えながら教室に戻っていった
その日朝のホームルームの時間・・・チェギョンの担任教師は満面の笑みで宣言した
『みんな!妃殿下が今年の学園祭のミスにエノミネートされた。
クラスのみんなはそれぞれに応援したい人もいるだろうが・・・クラス一丸となって妃殿下を応援しよう!』
担任のその言葉に驚いて椅子から立ち上がったチェギョンは、思わず首を横に振った
『せ・・・先生!そんなとんでもない・・・』
『いや~学校長の推薦だ。学園祭は盛り上がりそうだな。』
呑気にそんな事を言う担任に反し、チェギョンは冷や汗をかいていた
(そんなの・・・結果は火を見るより明らかじゃん。恥をかくために出るようなもんじゃん!)
唇を震わせ≪無理っ…そんなの無理っ・・・≫そう呟くチェギョンに、ユルは満面の笑みで言った
『チェギョン応援するからね。絶対大丈夫だよ。きっとこの学校のミはチェギョンだよ。』
『ユル君・・・そんなの絶対に無理だから~~~!』
戸惑っているチェギョン・・・そして心配になっているガンヒョン・・・
他のクラスメート達は凄い盛り上がりを見せていた
自分たちのクラスから皇太子妃が選ばれたのだ・・・その皇太子妃がこの学校のミスになったら
ィラスとしてこんな名誉なことはない
(うわ~~ん・・・)
チェギョンは棘を出すどころか項垂れ困り果ててしまった
(はぁ・・・一体どうしたらいいの?これから学校中を媚び売って歩く?
無理だよね~私のキャラで媚を売るなんて絶対に無理。
でも・・後夜祭で笑いものになるなんて嫌っ!
何よりシン君が恥をかく・・・どうしたらいいんだろう・・・)
考えれば考えるほど絶望的な結果が頭に浮かぶ
その日の昼休み・・・気の置けないいつものメンバーとの食事の時、ミスにノミネートされた経緯について
何も知らないチェギョンは意を決して告白をする
『シン君・・・あのさ~私・・・後夜祭のミスコンに…ノミネートされた・・・』
一瞬顔を引きつらせたシンは、すぐに笑顔を取り繕いチェギョンに言った
『そうか。俺はチェギョンに一票だ。』
間髪を入れずにギョンとガンヒョンも言った
『俺もチェギョンに入れるよ~♪』
『もちろんアタシも。』
『うん・・・』
浮かない顔のチェギョンは、食事中に何度も溜息を吐きながら弁当を流し込むように食べた
食欲など全くなく、できる事なら後夜祭など出ずに一人宮に帰りたかった
憂鬱な表情のチェギョンと心配そうなガンヒョンが、先に教室に戻った後・・・シンはギョンに真相を告白した
『ギョン・・・俺はどうしたらいいんだ。』
『どうしたの?シン・・・』
『今朝学校長のところにミスターの辞退をお願いに行ったんだ。なのに何を考えての判断なのか
チェギョンもノミネートされてしまったんだ。』
『なんだって?じゃあ・・・シンが招いた結果?』
『あぁ。俺が悪い・・・』
『シン・・・今更後悔したところでもうどうにもならないよ。既に噂は広まってるしね・・・』
『何の噂だ?』
『チェギョンがノミネートされたこと・・・もう俺の耳に入って来てたもん。』
『そうだったのか・・・チェギョンが傷つくのは見たくない。どうしたらいい?』
『シン・・・俺に任せておいてよ。俺がチェギョンの票をかき集めてみせるからさ。』
『本当か?』
『だけどシン・・・だったらお前もミスターにならないと・・・』
『俺がミスターになれるのか?シン・チェギョン一人を手に入れるのでさえあんなにやい変だった俺だぞ。
学校内の生徒の票が…集まるだろうか。』
『ちっ・・・我が国の皇太子がこんなに弱気でいいの?
はっきり言うけど全校生徒の気持ちを手に入れるより、チェギョン一人を手に入れる方がよほど大変だと思うよ。
それをお前は成し遂げたんだから自信持てよ。』
『あぁ。わかった。それで俺は・・・何をしたらいいんだ?』
『シンは何もしなくていい。ただ・・・登下校の時チェギョンと仲良くしていればいいよ。』
『今だって十分仲がいいと思うが?』
『もっとだよ。もっと恋太みたいに親密な雰囲気を出すんだって!』
『人前でそんなことができるか!』
『やってくれよ。シンの本気・・・この辺りで皆に見せてやれよ。後の事は俺とガンヒョンで何とかするからさ。』
『わかった恩に着る。ギョン・・・』
その日からシンはチェギョンに対して親密な雰囲気を醸し出す任務を遂行した
人前であっても妻を愛していることを前面に出せばよいのだから、それはとても容易い事だった
暑い・・・暑すぎる~~!
汗だくザウルスは、汗で髪がべたべたですぅ・・・
でも明後日から当分雨みたい。
暑くても晴れの日の方が嬉しいよね~~!