秋になり・・・いよいよ進路を決定する為のテストが近づいてきた
もちろん同系大学に進まず外部大学を受験する者達は、とうの昔から受験体制だったが
ほぼ七割の生徒はそのまま進学試験を受けることとなる
進学試験に関しては、たとえ皇太子と皇太子妃であろうと贔屓などしてもらえない
一定以上の点数を取らない事には進学が許されないのだ
二学期になってからシンとチェギョンは、進学試験に向けての勉強に取り組んだ
シンに関しては特進クラスに在籍しているのだから、成績優秀なのは言うまでもない
したがって妃殿下として恥じない成績を取るべく、チェギョンは猛勉強をさせられているのだ
『ねぇシン君・・・ある程度の点数を取れば大学に進学はできるんだよ。そんなに頑張らなくっても・・・』
『甘いなチェギョン・・・進学テストの順位が貼りだされるのを知らないのか?』
『えっ?マジで・・・』
『あぁ。それでなくてもお前はみんなから注目されているんだ。なのにもし・・・後ろから数えた方が早かったら?』
『ひぃ~~~っ・・・』
『皇太子妃の面目丸潰れだ。』
『それは・・・避けたい。』
『だったら勉強に集中しろ!』
『ふぁ~~い・・・』
余計なおしゃべりをしようものなら、教科書で頭を叩かれるチェギョン・・・
だがそんなスパルタ家庭教師のシンも、チェギョンが部屋に戻る時には必ず抱き締めて優しいキスをくれた
(ふぅっ・・・全くシン君てジキルとハイド?)
自分が棘を出した時の変わりようは、既にチェギョンにとっては過去の事になっているらしい
そして迎えた進学試験
その試験はすぐに採点され、中庭の掲示板に貼り出された
『が・・・ガンヒョン・・・見に行く?』
『えっ?アンタが見に行くの?』
『う・・・うん。』
『でも妃殿下が試験結果を見に行くなんて、カッコ悪いわよ。アタシが見てきてあげるわ。』
『いや・・・自分で見に行かないと気が済まない~~!』
『解ったわ。じゃあ一緒に行こう。』
恐る恐る向かった掲示板の前・・・躊躇うことなく上位から見ていくガンヒョンとその場で別行動をとり
チェギョンは下位を少し離れたところから眺め自分の名前がないか確認していく・・・
同じ頃シンも映像科の廊下から望遠レンズを使って、上位の名前を目で追っていた
(はぁ~とりあえず下位には入っていなかった。では真ん中辺りを見てみるか・・・)
頬をぴくぴくさせながらチェギョンが移動しようとした時、ガンヒョンがやってきてその腕を掴んだ
『アンタの名前、あったわよ。こっちこっち・・・』
『えっ?そっちって上位じゃあ・・・』
引っ張られるままついていったチェギョンは、自分の名前を確認し…その順位に視線を向けた
『27位・・・マジ?』
『ふふふ…アンタ頑張ったじゃない。アタシでさえ21位よ。つまりアタシとアンタだけが
我がクラスで上位に入れたって事。』
『ヤッター!ガンヒョンヤッタよ♪』
できるだけ喜びの声は控えめに話す二人
なんと言ってもそこにいるのは皇太子妃だ
その時ふとチェギョンは自分に向けられた視線を感じて、映像科に目を向けた
するとそこにはシンが満面の笑みで手を振っていた
チェギョンはシンに向かってガッツポーズで喜びを示した
こんな成績は今まで一度として取ったことがない
すべてシンのおかげだとチェギョンは思った
そして…冷静さを取り戻し、シンの順位を確認する
『シン君は・・・うわぁ~3位だって!全然自分の勉強なんかしてなかったのに・・・』
『ふふふ・・・ギョンも5位だって。また皇太子に負けたわね。アイツ・・・』
ひとまず納得のいく結果を確認できた二人は、大手を振って教室に戻っていった
そしてその日の昼休み・・・久し振りにシンに褒められているチェギョンがいた
『チェギョン・・・やればできるじゃないか。』
『うん。全部シン君のおかげ。妃殿下の体面・・・保てたかな?』
『あぁ。十分結果を出してくれた。』
『良かった~♪でもシン君は凄いね。自分の勉強なんか何もしなかったのに3位だなんて・・・』
『普段の授業を聞いていれば、あれくらい普通だ。』
そんな余裕を見せたシンの発言に、ギョンは忌々しそうに言った
『ちっ・・・俺だってノーベン(勉強していないのにという意味)で5位だもん♪』
『ったく・・・アンタは自慢しなくていいの!一度だって皇太子に勝ったことないでしょ。』
『ちっ・・・いつか必ず勝ってやる。あ・・・そうそう!大学進学も決まったことだし、次は学園祭だね~♪
シンったら・・・今年のミスターにノミネートされちゃったよ。』
『えっ?シン君本当?』
『あぁ。ただの客寄せパンダに使われただけだ。俺がミスターに選ばれる筈が無い。』
シンはそう言っているが実はチェギョンは気がついていた
全く違う世界の人だと興味もなかった頃は何とも思わなかったが、この学校でシンはかなり女生徒の人気を
集めていることを・・・
急に無口になってしまったチェギョンにガンヒョンは問い掛けた
『どうする?アンタも立候補する?』
『えっ・・・えぇ~~~っ?しないよぉ。私はそんなの好きじゃないしっ!』
『でも確か・・・ミスターとミスに選ばれた人は、後夜祭でダンスを踊るのよ。
アンタ・・・公然と皇太子にくっつける機会を逃す気?』
『あのね~~ガンヒョン、私は男の子に人気がないの。ほら・・・喧嘩っ早いから・・・』
『でも今のアンタは以前のアンタと違うでしょう?』
『ん~~でも・・・立候補なんかしない。』
『皇太子が他の生徒とダンスを踊ってもいいの?』
『それは・・・嫌だけど・・・。とにかく私がそんなのに出たところで、票が集まることはないからやめておくよ。』
≪お前なんか可愛くない!≫と言われたことがトラウマになっているわけではないが、
その時以来危険を察知するとハリネズミになって自分を守ったチェギョンは、公衆の面前で落選し
自分が傷つくのは嫌だった
だからといってシンが他の生徒と踊るのは見たくない
グラグラと心を揺れ動かしながらチェギョンは席を立った
『あ~私、今日日直だから先に戻るね。』
そう言って皇太子ルームを一人で出て行ってしまった
(ん~~シン君が妻である私を差し置いて、他の女の子と踊るなんて~~想像したくない~~!
あ・・・でも私、ダンスなんか踊れなかった~あはは~~どっちにしてもダメじゃん!!)
もちろんシンがミスターに選ばれるとは限らないのだが、既にチェギョンの想いはその時を想像し
棘を出しそうだった
そんなチェギョンが去った後、ギョンはシンとガンヒョンに提案した
『なあ・・・きっとシンがミスターに選ばれて、他の女の子と踊ったりなんかしたら・・・
チェギョンはきっとすごく怒るよな?』
『さっきの様子じゃ間違いないわね。』
『だが・・・チェギョンがもし立候補してもミスに選ばれる可能性はあるのか?』
『皇太子・・・なかなか難しい質問ね。チェギョンは男子に結構喧嘩吹っ掛けていたから、男子からの票は
期待できそうにないわ。』
『でもさガンヒョン・・・もし立候補して、他の子が選ばれた時・・・チェギョンは荒れるよな?』
『こうなったらアタシ達で組織票を集める?』
そんなギョンとガンヒョンにシンは穏やかに微笑んだ
『いや・・・そんな事はやめておこう。俺がノミネートを辞退したらいい話だ。』
『でも皇太子・・・辞退できるの?』
『学校長に掛け合ってみるよ。こんな事でチェギョンの気持ちを乱したくない。』
『う~~ん・・・』
折角進学試験の結果が上々だったのに、持ち上がった問題に頭を抱える三人だった
皇太子ルームから一人で教室に戻っていったチェギョンは、背後から呼び止める声を聞いた
『妃殿下♪こんにちは~♪』
振り向くとそこには舞踏科のミン・ヒョリンが立っていた
『あ・・・ヒョリン♪どうしたの?』
『あのね・・・私、学園祭のミスにノミネートされたの。もし・・・私と殿下が選ばれたとしても
許してくれるでしょう?一緒に踊って構わないわよね?』
チェギョンの想いは複雑だったが、目の前にいるヒョリンはずっとシンの事を好きでいた女の子だ
条件が診たないという理由で、お妃選考も第一次で落とされたヒョリンだ
他の女の子ならともかく・・・ヒョリンには踊る資格があるように思えた
『うん。構わない。』
『ありがとう。先に妃殿下の許可を頂きたくて来たの。』
『ミスコン頑張って。』
『頑張るわ!』
満面の笑みで去っていったヒョリン
恐らくヒョリンはミスに選ばれるだろうとチェギョンは予想していた
(あ~あ・・・もっと男子に人気のあるキャラだったらよかったなぁ。
ダンスパートナーをヒョリンに譲らないのに・・・)
たとえシンから選ばれたのが自分でも、万人は自分を選ばない
そのことを知っていたチェギョンは、≪学園祭なんか来なきゃいいのに…≫と心の中で毒づいた
はふぅ・・・暑すぎて全然集中できなかった。
まだ6月だよね・・・
この分では夏が怖いわ。
九州地方の皆様・・・
記録的大雨、被害はありませんか?
今後もどうぞご注意くださいね。
管理人地方は熱風が吹き荒れています。