夏休みに入って最初の日曜日・・・チェギョンは母が着せてくれたチョゴリに身を包み玄関を出て行った
まだ鳥のさえずりが賑やかな早朝の時間である
本日は婚礼の儀・・・シン家周辺の混雑が予想され、早い時間の入宮となった
『じゃあお父さんお母さん、行ってきます。』
『チェギョン・・・いい?いくら気に入らないことがあっても、トゲトゲしないのよ。わかった?』
『お母さん・・・それは心配ないよ。シン君は私の棘を収められる唯一の人だから・・・。
それにシン君だって慣れたものだよ。シン君の方が私より一枚上手。あははは~~♪』
『だけどチェギョン・・・皇太子殿下に、呆れられないように程々にするんだよ。』
『お父さんも~~心配性だね。そんなことより婚礼の儀式に遅れないでね。』
『あぁそうだ。私達もそろそろ支度をしないと・・・』
娘の旅立ちを涙で見送るどころか、娘に発破を掛けられる始末の両親
チェギョンは満面の笑みを残し、シン家を後にした
その後ろ姿を呆然と見送る両親
『随分・・・呆気ないお別れだな。』
『仕方ないわよ。好きな人の家に行くんですもの。親なんて二の次でしょ。』
『女の子なんか・・・育てるんじゃなかった。』
『あなた・・・これもお義父さんのお導きよ。』
『お父さ~ん・・・ひどすぎる~~!』
『あなた・・・もうそんなこと嘆いている時間はないわ。私達も早く着替えましょう。』
『ああ・・・そうだ!急がないと婚礼の儀式に遅れてしまう!』
頬を濡らした涙を拭い、二人は支度のため家の中に入っていった
東宮殿妃殿下の部屋で着替えを済ませたチェギョンは、チェ尚宮に化粧を施して貰い鏡に映る自分の姿に
驚きを隠せなかった
(ひ・・・ひえ~~私ってひょっとして、すごく可愛いんじゃないのかな?
こりゃ~シン君も惚れ直すに違いない。あはははは~~♪)
そんなことを思っていた時、間髪を入れずチェ尚宮が言う
『妃宮様・・・大層お綺麗です。』
『あっ///ありがとうございます。』
『殿下が廊下でお待ちかねだろうかと存じます。参りましょう。』
『は・・・はい。』
妃殿下の部屋の扉を開け二人が出ていくと、シンはすっかり婚礼衣装に身を包み落ち着かない様子で
部屋の前に立っていた
『シン君♪すごく待った?』
『あ・・・いや、今部屋から出たばかりだ。』
きっとそうではないと悟ったチェギョンとチェ尚宮は、互いに顔を見合わせ微笑み合った
『では…妃宮、行こうか。』
『はい。皇太子殿下♪』
シンは左手をそっと差し出し、チェギョンの少し前を歩く
チェギョンは伝統衣装に足を取られないように足元を見ながら歩くのに必死だ
『チェギョン・・・化粧をしたのか?』
『うん。チェ尚宮さんがしてくれたの。どう?』
『ど・・・どうって?』
『似合うかって聞いてるの。』
『そりゃあとてもよく似合っている。か・・・可愛いよ///』
『可愛い///?あはは~♪』
『ずっとこうやって手を繋いで生きていこうな。』
『うん。至らないところも多いと思うけどよろしくね♪』
『あぁ。東宮によく来てくれた。大歓迎・・・するよ。』
『うん。長い間私を待っていてくれてありがとう。』
『こちらこそ…ありがとう。』
夫婦になる儀式の場所に向かいながら、二人は幸せな未来を確信していた
チェギョンの両親も参列した親迎の礼・・・
両親は無事皇太子妃となった娘を、緊張と感動の涙で見つめていた
滞りなく儀式を済ませたチェギョンは、夫である皇太子と共に婚礼パレードに出かけてしまった
『はぁ・・・なんだかすごく疲れたな。』
『そうねあなた。でもきっと家に帰ったらもっと大変かも・・・親戚や近所の皆さんが押し掛けるわ。』
『ああ・・・暫く雲隠れしたい気分だな。』
『そうもいかないわよ。お祝い事なんですからね。』
帰宅してからのどんちゃん騒ぎに少し気を重くしながらも、二人は宮殿を後にし自宅に帰って行った
一方・・・二人乗りの馬車で婚礼パレードに向かったシンとチェギョンは、程よい温度に設定されていた場所から
真夏の炎天下に婚礼衣装といういでたちだった
最初はにこやかにしていたチェyゴンだったが、だんだん根を上げ始めた
『あ~暑い~~重い~~もう汗だくだよぉ~~!』
口では愚痴を並べたてながらも、笑顔を作り沿道の民衆に手を振る
『もうしばらくの辛抱だ。我慢しろ。』
『そうは思うんだけど~早く脱ぎたい~~!』
『脱ぎ・・・たい?///ばっ・・・馬鹿!妃宮たるもの、そのようなはしたない発言はするなっ!』
『ん~~~・・・』
右手を振りながら左手では衣装の裾をパタパタと持ち上げ、どうやら少しでも風を送ろうとしているようだ
チェギョンのそんな仕草に思わず目を逸らした先に、シンは友人たちがいることに気が付く
『ほら・・・ギョンやガンヒョン達も俺達を祝福してくれている。』
『あっ!本当だ~~♪ガンヒョ~~ン、みんなもありがとう~♪』
もちろんそこにはガンヒョンばかりでなくヒスンやスニョン・・・またミン・ヒョリンの姿もあった
婚礼の儀式に立ち会ったユルもギョン達のグループと合流し、二人に向かって手を振っている
二人がこの日を迎えるために、力を貸してくれた友たちがみんな満面の笑みで二人を祝ってくれていた
自由奔放なチェギョンに煽られ、ともすればこの先の儀式の事で頭が一杯になっていたシンだったが
そんな気持ちを少し鎮めてくれた友人たちの祝福だった
義愛閣に入って行った二人は、婚礼衣装からそれぞれに着替えを済ませ・・・同牢の礼の儀式の間に向かう
スーツ姿のシンともう見慣れたチョゴリ姿のチェギョンは、チェ尚宮の介添えで夫婦として初めての食事を摂った
『殿下・・・この後の予定ですが・・・』
『あ?///あぁ・・・///』
つい俯いてしまうシン・・・チェギョンは意味が解らなかったのか、じっと聞き入っている
『お食事が終わりましたら東宮殿にお戻りください。』
『あぁ?今日は・・・ここで過ごすのではないのか?』
『いえ・・・まだ高校生でございますから.合房の儀に関しましてはまた日取りを決めてという
陛下からのご命令です。』
『なっなにっ?』
愛らしい新妻を前に呆然とするシン
(陛下~~それはあんまりです!!)
そんなシンの胸の内は三陛下に届いたような気がする・・・
あはは~~お預け喰らっちゃったシン君。
なんて可哀想な~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!