シンとの電話を切った後、チェギョンは寝転んでいた自分のベッドから起き上がり両親がいるリビングに
入って行った
『お父さんお母さん・・・聞きたいことがあるんだけど・・・』
『なあにチェギョン・・・』
『なんだか深刻そうな顔をしているな。』
『あのね・・・昔のことなんだけど、うちのおじいちゃんと前の皇帝陛下って・・・』
そこまでチェギョンが話した時、父ナムギルの顔色が変わった
『生前お友達だったって・・・本当みたいだね。』
『チェギョン…誰から聞いたんだ?』
『ん?皇太子と皇太后様。昔・・・皇太子の家に遊びに行ったことがあるんだって?』
『そっ・・・そんなことあったかなぁ?母さん・・・』
あまりにもわざとらしい口調で白を切るナムギル
『あったわよ。チェギョン・・・あなたが小さい時。その頃今の皇太子殿下は
皇族であっても宮殿には住んでいなかったわ。』
『本当のことだったんだ。それで・・・本当に聞きたいのはここから。
おじいちゃん、お父さんとお母さんに帰ってきてから何か言った?』
『あ・・・ずいぶん昔の話だからよく覚えていないわ。』
『だよね~~。』
『でもあなたはその日帰ってから、≪大人になったらお姫様になるの≫っていつも言うようになったわ。』
『お姫様?』
『だからあなたはヒラヒラしたスカートやワンピースを好んで着ていたわ。』
『ヒラヒラ・・・そっか・・・わかった。どうもありがとう。』
『ちょっと待ちなさいチェギョン・・・三次選考はどうなったの?』
リビングから出ようとしていたチェギョンは、両親に振り向いて答えた
『表向き・・・ただいま選考中ってことになっているけど、皇太子妃内定の訓示を頂戴した。』
『『え~~っ!』』
『受けるとは返事ができないから猶予をもらったよ。よく考えたいこともあるし・・・
だから今すぐどうこうってことはないよ。じゃあおやすみなさ~~い。』
(でも本当は断れないらしいよ。お父さんお母さん・・・)
皇太后の言っていたひと月かふた月後には、皇太子の婚約発表があるだろう
あまりにも短い期間でシンの事を結婚相手として承諾できるかどうか、チェギョンは苦悩していた
部屋に戻ったチェギョンは、携帯電話を握りしめたまま先程の母親の言葉を考える
『つまり・・3歳の頃ただ一度逢っただけで皇太子は私を結婚相手として決めた。
でもさっきのお母さんの話だと、私も十分その気だったって事?
だけどさぁ~3歳の頃の気持ちを、この年まで引きずる?普通・・・
いくら世間離れした環境にいるからって、ありえないでしょう。
そっか・・・ヒラヒラ・・・やっぱり私、好きだったんだ。てかそういえばあの皇太子、
≪何度でも可愛いって言う≫と言った?
まったく・・・並み以上だからそんなセリフ言っても許されるけど、不細工だったら絶対に許されないよっ!
あっ・・・///あれっ?///』
昨晩、移動した部屋で二人きりの会話を思い出し、顔が火照るチェギョン
『あ~もぉ~何なのよ一体~~~!!』
そんな自分の心境の変化を認め難く、チェギョンは頭から布団を被って必死に眠ろうとした
その瞬間・・・昨晩起こった事件を思い出す
『あの人・・・殺されちゃったんだ。一体私になにをするつもりだったんだろう。
ひょっとしたら私も同じ目に遭わすつもりでいたかも・・・
ひえ~~皇太子とこれから付き合わなきゃならないのに、大丈夫かなぁ・・・私・・・』
皇太子との秘密の交際も命懸けだと認識したチェギョン
『でもさ・・・その男を私のところに送り込んだのは誰?・・・やっぱ思いつくのはあのお嬢さんたちの誰かだ。
だからって…まだ表向き候補でしかない私を狙うかなぁ・・・
そんなに皇太子妃の地位って、人の命よりも大事なの?・・・』
シンの行動や言葉に心を揺さぶられながらも、まだ命懸けの恋にピンとこないチェギョンだった
翌日、午前中の授業が終わり昼休みに入った時、席を立ち上がろうとしたチェギョンは
ガンヒョンに声を掛けられた
『行くんでしょ?チェギョン・・・』
『えっ?』
『惚ける気?映像科・・・』
『あ・・・うん。約束したからね。』
『アタシも一緒に来いって言われたわ。』
『えっ?』
『カムフラージュよ。全く・・・このアタシをカムフラージュに使うなんてあの男・・・』
『あはは~ホント最低だよね。じゃあ行こうか。きっとギョン君も一緒でしょう?』
『もちろん♪』
美術科の棟を出て映像科に向かうと、既にイギサ達は遠巻きにチェギョンとガンヒョンの様子を見守っている
そして映像科の棟を入ると、そこにはチェ尚宮が待機していた
『こんにちは。シン・チェギョンさん・イ・ガンヒョンさん・・・先日は大変お疲れ様でした。』
『こんにちは~♪』『こんにちは。』
『ご案内いたします。』
チェ尚宮の後に続くと映像科の中でも奥まった場所に教室とは趣の違う扉が現れ二人は驚いた
『こちらでございます。』
チェ尚宮はノックをし、中にいるシンに声を掛けた
『殿下、お越しになりました。』
『通してくれ。』
『失礼いたします。』
チェ尚宮は扉を開け、二人を部屋の中に促した
『来たよ。約束通り。』
『よく来たな。イ・ガンヒョンもすまない。』
『いいわよ。美味しいお弁当を用意してくれるって言うから、それにつられてきただけよ。
ギョン・・・アンタはこっちに来てよ。』
ガンヒョンはシンの隣に座っているギョンに目配せをした
『あ?あ・・・ああそうだな。チェギョンはここに座って。』
シンの向かいにギョンは腰かけ、従ってチェギョンはシンの隣に腰を下ろした
『昨日はお疲れ様。さぁ食事をしながら話をしよう。』
皇室から届けられた弁当を開く四人・・・
ギョンは昨日の事件について問い掛けた
『シン・・・昨日の男の身元、わかった?』
『あぁ。民間の警察に犯罪歴があったからな。すぐに割れたよ。』
『あの男を船に誘導した黒幕って・・・一体誰かしら?』
そうガンヒョンが言った時・・・チェギョンはおかずを口に運びながら自分の意見を言ってみる
『私・・・思ったんだけど、あの三次選考会の時私だけ特別扱いだったでしょう?』
『あ?何のことだ?』
『食事の席だよ!私だけ皇太子や皇太后様と一緒で・・・』
『あぁ確かに・・・』
『あの王族のお嬢さんの中の誰かじゃないの?
民間人の私が皇族と席を一緒にしているのが面白くなかったんだよ。』
『・・・あぁ。皇室警察やイギサもその線で動いている。あの晩・・・携帯で家族に連絡を取った娘は
四人中二人いた。今その二人に焦点を絞って調べているところだ。』
『あのさ・・・あの時私が侵入してきた男に嚙みつかなかったら、一体どうなっていたかな。』
『それは・・・』
シンの顔色が曇った
『だよね。きっとそういうことになっていたよね。それほど皇太子妃になるのが、
王族のお嬢さん達には重要なことなんだよね。
人の命なんて虫けらのように抹殺できるんだよね?』
『だヵらこそ俺は・・・地位や名誉に固執しないお前を選んだんだ。』
『なるほど・・・もうひとつ聞きたいんだけど、昔皇太子と逢ったのが本当だったと両親から聞いた。
でも・・・ただそれだけで3歳の皇太子が結婚を決めるとは思えないんだけど・・・その辺り説明してくれない?』
チェギョンの真剣な眼差しに、シンはとうとう昔約束した言葉を言おうとしている
『あの時・・・お前は本当に花のように愛らしくて、3歳の俺は恋に落ちた。
一日中遊んで一緒に昼寝もして、お前が帰る時寂しくてどうしても繋ぎ止めたかった。』
『あのさ~3歳だよね?』
『あぁ。3歳だ。俺の気持ちはその時と何ら変わっていない。だから言ったんだ。
≪大人になったら僕のお姫様になってくれる?≫とな。
お前は嬉しそうに頷いて、俺にいつでもニコニコ笑っていると約束をした。』
『ねえ?3歳から今まで他にそういう人はいなかったわけ?』
『いる筈が無い。俺はその時の約束を果たす為、この高校にやってきたんだから・・・』
『この高校にだって綺麗な子はいっぱいいるでしょう?そういう気持ちにはならなかったわけ?』
『ならない。俺はお前だけを見てたから・・・』
『信じられない!今時そんな男いる?』
『ここにいるだろう?逆にシン・チェギョンには・・・そういう男がいたのか?』
『えっ?・・・いないけど・・・』
『じゃあ何の問題もないだろう?』
『でも皇太子の姫になるのは命懸けみたい。自分にその覚悟ができるのかどうかわからない。』
『俺が覚悟させてみせる。』
シンとチェギョンが真剣にそんな話をするのを、ギョンとガンヒョンは半分呆れ顔で聞いていない振りをし
目の前の弁当を口に運んでいた
ふぅちゃんはまだご飯を食べてくれないけど
おやつは昨日より食べてくれるようになりました。
庭に生えていたイネ科の雑草を見せたら
むさぼるように食しておりました。
明日はもっと元気になるといいな。
そんな状況でして・・・ふぅちゃんをじっと見ている時間が長く
最近更新が遅くてゴメンね~~!!