暫くリビング内に重苦しい空気が流れた・・・ピョルは俯いちゃっているし、チェギョンさんは明らかに怒り心頭な
面持ちだし・・・シンのあまりの形相にハヌルとウォルはピクリとも動かずじっとしている
そんな時に帰宅した夫は、呑気な口調で私に問い掛けた
『んっ?母さん・・・みんなでにらめっこでもしているのかい?』
全くこの状況で何を言ってくれるの!
私は素っ気なく答えてやったわ
『いいえ違うわ。』
あぁぁ・・・なんて空気の読めない人なのかしら・・・小さく溜息を吐いた時だった
入り口のインターフォンが鳴り来客を知らせたの
慌ててモニターを確認すると、なんと・・・テヤン君とハン家の奥様もご一緒だわ
きっとテヤン君が心配になって一緒にいらしたのね
モニターに映る二人は、すこし言い争っている雰囲気よ
『ばあちゃんは帰れよ!』
『そうはいかないわ。私も一緒に行くわ。』
『いいから!帰ってくれよ。』
テヤン君につれなくされるハン家の奥様…可哀想に・・・私はマイクをオンにして二人に話しかけた
『どうぞ。お二人共お入りくださいね。』
そして門扉を開けると、二人を敷地内に招き入れた
二人は運転手さんの運転する車で我が家にやってきたみたい
車は我が家の玄関の前に停まり、ハン家の奥様とテヤン君は車から降りた
『さぁどうぞ、お上がりください。』
『グランマ・・・こんな時間にすみません。お邪魔します。』
『イ家の大奥様、失礼いたします。』
いいのよ~呼び出したのはうちのシンだもの・・・
それにあらぁ・・・テヤン君にまでグランマが浸透しているのね。おほほほほ~♪
あ・・・そんな場合じゃなかったわ
私は二人をリビングに招き入れた
『シン・・・テヤン君が来たわ。ハン家の奥様も一緒に来てくださったのよ。』
シンはハン家の奥様を目にし、少しバツの悪そうな顔をする
さ~て~は~テヤン君を相当苛めるつもりだったのね
私はテヤン君をピョルの隣に掛けさせ、ハン家の奥様を部屋の隅に連れて行くと問い掛けた
『奥様までどうしてご一緒に?』
『テヤンがピョルちゃんのパパに呼び出されたって聞いたものですから、今日うちで起こったことが
原因じゃないかと、心配になってついてきたんですの。』
『相手が誰であろうとピョルが男の子と交際しているなんて知ったら、呼び出すに違いありませんわ。』
『えっ?では・・・内緒にしていたのですか?』
『ええ。主人と息子には・・・。なにしろあの二人はピョルを溺愛しておりますから・・・』
『まぁ。そうだったんですか。だったらついてきてよかったかもしれませんね。』
『ええ。賢明な選択でしたわ。』
固唾をのんで見守る私とハン家の奥様・・・リビングに続くキッチンでは椅子に腰かけた夫とハヌルとウォル
そしてキッチンからリビングを覗き込み、チェギョンさんが様子を窺っている
いつでも飛び出せる態勢ね。さすがチェギョンさんだわ
とうとうシンが口を開いたわ
『一昨年の冬の事だったか?君がピョルを送ってきたのは・・・。あの時確か言ったはずだな?
ピョルに関わるなと・・・』
『ですが・・・一緒に留学するのを許してくださいました。』
『それは・・・こちらの事情で許しただけだ。君との付き合いを黙認したわけじゃない。
大体・・・ピョルが自分の母親に攻撃されているのさえ防げないような男と、うちのピョルが付き合うなんて
許すはずがない。どうは思わないか?』
『思いません!俺はあのあと母親を責めました。俺の母親が何も言わないで帰ってしまったピョルを
非難するような発言をしたから、思い切り言ってやりました。
それはうちのばあちゃんも聞いています。お疑いでしたらばあちゃんに確認してください。』
即座にハン家の奥様はシンに告げた
『この子の言うことは本当です。イ・シンさん・・・気を悪くなさるでしょうが、
私があまりにもこちらのチェギョンさんの事を日頃から褒めていたものですから、
嫁は面白くなかったのかもしれません。チェギョンさんを悪く言ったんです。
もちろん私もそれには反論しましたし、テヤンも母親に食って掛かる勢いでした。
そんな家族原価のような状態の時に、ヒョリンさんがうちの嫁に言ったんです。
≪チェギョンさんの事を悪く言うなんて私が許さないわ。
私はあの人のおかげで幸せになれたの。
あの人と再会できなかったら、今こうしてお宅に遊びに来るような心境にはなれなかったわ。
私の前でチェギョンさんやピョルちゃんを悪く言うなんて絶対にやめて!
あなただってチェギョンさんに逢ってみればきっとわかるわ。
あの人は・・・尖った人の心を溶かす人よ!≫
って言ったんです。嫁は日頃から仲の良いヒョリンさんからそう言われて、
もう何も言えなくなってしまいましたわ。』
黙ってそれを聞いていたシン・・・チェギョンさんはなんだか照れくさそうに頬を染めている
畳みかけるようにテヤン君は言ったわ
『おじさん!お願いします。ピョルとの付き合いを認めてください!』
『だが・・・』
『ピョルのことはウォルが生まれた頃からずっと見てきたんです。俺は真剣です!」
シンのその後に続く言葉はわかっているわよ。確かにあなたは父親でいられる期間が短い
でもだからって大事な娘の一番楽しい時期を奪う権利はないはずよ!
その時・・・とうとうチェギョンさんが鶴の一声を発した
『シン君!いつまでもわからないこと言っていたら、子供達を連れて実家に戻るわよ!』
すかさず私も援護射撃よ
『あ~じゃあ私も一緒に行こうかしら。メイドさん達も一緒に・・・』
『お義母様ぁ~あの家にそんなに大勢住めませんっ。くすくす・・・』
チェギョンさんからここまで言われたら、シンは折れるはずだもの
シンは苦虫を噛み潰したような顔になり、首を下げてしばらく悩んでいるようだったわ
そこをさらに追い打ちをかけるチェギョンさん
『シン君・・・どうするの?認めてあげるの?それとも別居する?』
シンは深いふか~~い溜息をひとつ吐いて、それから顔を上げた
『わかった。俺が折れよう。だが・・・門限は夜8時だ。夜8時までには必ず帰宅すこと!』
黙って事の成り行きを見守っていたピョルは、ようやく口を開いた
『パパ…もうすぐ三年生になるんだよ。三年生になったら部活だって忙しいし、
その後の友達とのお付き合いもある。今まで通り・・・門限は作らないで!』
当然よ。高校三年生にもなって夜8時には帰れだなんて、シン・・・あなた時代錯誤だわ
ここは私の出番ね
『ピョル・・・門限は今まで通りなしよ。その代わり遅くなる時には必ず連絡をするのよ。』
『はいっ♪グランマ。』
『じゃあそうと決まったらお食事にしましょう♪ハン家の奥様とテヤン君も召し上がって行ってね。』
『えっ?イ家の大奥様・・・そんなお気遣いは申し訳ないですわ。だって急いでやってきたので
手土産も持って来なかったんですのよ。』
『あら~そんなこと構わなくってよ。さぁ~お食事にしましょう♪』
キッチンのテーブルに其々座った私達
今まで蚊帳の外だった夫とハヌル・ウォルはテヤン君を質問攻めにしている
シンはまだ納得はできていないようだけど、なにか口を開こうものならチェギョンさんが大きな目を見開いて
睨むものだから何も言えないみたいよ~面白いわ~♪
こうしてピョルの初めての恋は、家族公認となった
きっとピョルはこれから伸び伸びとテヤン君とのデートが楽しめるに違いないわ
しかし・・・ハン家のお嫁さん、ちゃんと反省したかしらね
もしまたピョルに意地悪するようなことがあったら、今度は私が許しませんからね~~!
もっとシン君に粘らせるつもりだったんだけど・・・
音読皇子が帰宅しちゃって
集中できなかった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
音読皇子が帰宅しちゃって
集中できなかった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!