『奥様・・・ハン様と仰る方からお電話です。』
『ハンさん?そう・・・今行くわ。』
食事の支度中にかかってきた電話・・・もう!こんな忙しい時間帯に一体誰なの?
友人にハンという姓はいない・・・訝し気に私は電話を取った
『はい、お電話代わりました。』
『大奥様でいらっしゃいますか?私・・・ハン・テヤンの祖母です。』
えっ?ハン・テヤンの祖母って言ったら、今日ピョルのことを噂にしていたあの人の姑?
拙い・・・あの嫁・・・姑に言いつけたわねっ!
ここで話すのは拙いわ。自室に行きましょう
『申し訳ありません。少しお待ちください。』
一旦電話を保留にし自室に入って行った私は、ひとつ大きな深呼吸をして再び電話を取った
『大変お待たせいたしました。』
『あの・・・うちの嫁がイ家のお孫さんのピョルちゃんの事を、公衆の面前で噂していたそうで・・・
大奥様に大変失礼なことをおきかせしてしまって、本当に申し訳ございませんでした。』
あら…文句じゃなくて詫びの電話?
『あ・・・いいえ、私もつい感情的になってしまいましてね・・・』
『大奥様にはご子息の最初の結婚式の時にお目にかかっておりまして・・・』
まっ!拙いわ・・・それってミン家と懇意にしているって事?
『そ・・・そうでしたか。』
電話の主に弱みを握られていることを知り・・・私、いつになくちょっと弱気・・・
ミン家にはこのこと・・・ご内密に・・・そう言おうとした時、ハン家のご婦人は意外な事を言いだした
『嫁の失態のお詫びに、明日今日うちの嫁と逢ったレストランの個室を予約いたしました。
お越しいただけますでしょうか?』
えっ?明日もあの店に来いと?
あのお店は確かに美味しいのだけどお値段が張るのよね
今日奥様会で大盤振る舞いしちゃったから、ちょっと戸惑ってしまうわ
『明日・・・ですか?』
『ええ。大奥様がお越しくださるまでお待ちします。』
『わ・・・わかりましたわ。お時間は?』
『正午頃でいかかでしょうか。』
『構いませんわ。』
『ではまたその時に、きちんとお詫びさせていただきます。』
そう言って電話は切れた
珍しいわ・・・私が誰かに押し切られるなんて・・・まぁ弱みがあるから仕方ないけど・・・
キッチンに戻っていくと何か悩んでいるような顔をした私を察したのか、チェギョンさんに心配された
『お義母様、どうかなさったんですか?あまり顔色がよくないようですが・・・』
『えっ?ううんそんなことないわ~♪おほほほほ・・・』
嫁のチェギョンさんには、シンの前妻の関係者にピョルの秘密を漏らしてしまったなんて
口が裂けても言えないわ
『チェギョンさん・・・明日もお友達から誘われてしまったの。出掛けてきてもいいかしら?』
『ええ構いません。お義母様だって少しはゆっくりなさらないと・・・』
『ありがとう。』
明日はちょっと気が重いお出かけなのよ
ピョルの名誉を守る為とはいえ、相手も確かめずに啖呵を切ってしまった落とし前をつけに
私は翌日・・・昨日と同じ店に出向いた
その店に入って行くとボーイが何も言わないのに私を案内してくれた
『イ家の奥様・・・本日もご来店いただきありがとうございます。ハン家の奥様がお待ちになっておいでです。
お席までご案内いたします。』
本日も・・・は余計よ!そんなことを心の中で毒づきながら、私は昨日と同じVIPルームに案内された
『大奥様!』
ハン家のご婦人は私が部屋に入って行くと、立ち上がって深く頭を下げた
あぁぁ・・・一体何の話があるのかしら?
『昨日はうちの嫁が大変失礼をいたしました。
嫁の言った言葉・・・ご立腹でしょうがどうか私に免じてお許しください。』
『こんにちは。もう頭を上げてください。掛けましょう。』
ハン家のご婦人を促して私は向かいの席に腰を下ろすと同時に、第一声でお願い事をしなければならなかった
『私・・・あなたにお願い事があってここに来たんです。お詫びをしてほしかったんじゃないんですよ。
お役のお嫁さんがミン家と懇意になさっている家柄だと知っていたら、私は何も聞かなかったことにして
立ち去ったかもしれませんわ。
ピョルの件は・・・ピョル自身や私達も後から知ったことで、世間的にはお嫁さんの連れ子だと思われていますけど
正真正銘うちの・・・息子の娘なんです。
でも・・・ピョル自身もそのことは人に言おうとしないんです。
きっと息子の立場が危うくなるのを恐れてのことでしょう。
だからミン家に知られると・・・非常に困るんですの。この話はあなたの胸にしまっておいていただけませんか?』
非常に低調にしかも媚びないように言ったつもりよ
『大奥様・・・それはもちろんです。もしミン家がそんなことを知ったら、もうとうに終わった話なのに
何を言い出すかわかりませんもの。そんなことは私も重々承知しています。
この件は一切口外しませんわ。』
じゃあなぜ・・・こんなところに呼び出したのかしら?
『そう。でしたら安心いたしましたわ。』
そういいながら私はハン家のご婦人の様子を窺った
きっと何か考えがあってここに呼び出したのだと予想していた
『実は今日ここにお越しいただいたのは、お詫びを兼ねてお願いもあったからなんです。』
ほら来た・・・一体何のお願いかしら・・・私はハン家のご婦人の次の言葉を待った
『お願いというのはピョルちゃんの事なんです。学校の交換留学生に選ばれたのをご存知でしょうか。』
知ってるわ。あなたのお孫さんがそう言っていたもの・・・でもここは知らない振りをしなくちゃいけないわね
『えっ?そうなんですの?まぁ~それは名誉なことですわ。父も娘も交換留学生に選ばれるなんて
こんな名誉なことはありませんわ。』
『息子さんも・・・でしたか。』
『ええ。息子も高校生の時、三カ月海外に行きましたわ。』
『ピョルちゃんは・・・ご家族に言っていないんですね。』
『ええ。まだそのことを報告していませんわ。』
『孫のテヤンから聞いたのですが、どうもピョルちゃんは言い難いらしくて・・・それでうちの嫁も
余計誤解してしまったらしいんです。大奥様・・・ピョルちゃんの留学を後押ししてやってくださいませんか?』
それは・・・正直言うと嫌だわ
だってピョルがいなくなったら、本当に寂しい毎日になってしまうもの・・・
そこで私はちょっと意地悪を言ってみる
『でもお宅のお嫁さんは、テヤン君とピョルが一緒に留学するのを嫌がっておいででしたけど?』
『それは・・・事情を知らなかったからですわ。もう今は手放しで大賛成してますのよ。
それに何よりテヤンが・・・ピョルちゃんとどうしても留学したいというものですから
私がお詫びを兼ねてお願いしようかと・・・』
なるほど・・・あのお嫁さん、ピョルがイ家の子と知ったら手のひらを返したわけね
『解りました。ではピョルの気持ちを確認してから、家族を説得するようにいたしましょう。』
シンが承諾するとは思えないけど、可愛い孫娘がもし・・・行きたい気持ちを言えずにいるのなら
ここは私の出番よね
ハン家のご婦人とその後は楽しく食事をして、すっかり意気投合した私
今日はご馳走になったから私のお財布も痛まなかったわ~♪
どうもハン家のご婦人にしても、今まで付き合いのなかったイ家と繋がりができたことは非常に嬉しいみたい
まぁそうよね・・・ミン家の奥様のご機嫌を取るのは大変そうだもの・・・おほほほほ・・・
その日私は帰宅したピョルを部屋に呼び、そのことを問い掛けた
『ピョル・・・三カ月の交換留学生に選ばれたって話を聞いたのだけど・・・』
『えっ?グランマ・・・一体誰からですか?』
『それは内緒よ。おほほほほ~♪ピョルの本心はどうなの?海外留学したい?』
『えっ?うん・・・本当は行ってみたいです。でもパパが許してくれないと思う。』
『パパね~~そうよね、あのパパが厄介なのよね。でもピョルが本当に行きたいのであれば
グランマが力を貸しちゃうけど?』
『えっ?本当ですか?』
『本当よ~♪だってあなたのパパもその交換留学生として短期留学の経験があるのよ。』
『パパも?あ~やっぱパパはすごい人だ。』
あなたも十分すごいわよピョル
決行をその日の夕食時にした私とピョルは、何も知らない家族に報告するために綿密な計画を練った
さて・・・あのわからずやのシンをどう説得してやろうかしら~~!
(つづく)
皆様~~すみません。
来年に持ち越してしまいますぅ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
しかしすごい風ですね。
ハウスの中・・・いくつも多肉が落下しました(号泣)
年内通常のお話の更新は
ひとますこれが最終になります。
≪大奥に咲いた恋≫は修正して更新させていただきますね~★