まるで競うかのように帰宅したヒョンとシン・・・
二人はひとしきりピョルに熱烈な帰宅の挨拶をした後、ピョルに問い掛けた
『ピョル・・・ハヌルは?』
『もうリビングに来ていますぅ~♪ママも一緒ですぅ~♪』
『おおそうかい。さぁ行こう。』
ピョルを伴ってリビングに入って行ったヒョンとシンは、まずチェギョンに祝いの言葉を掛けた
『チェギョンさん・・・退院おめでとう。』
『お帰りチェギョン。』
『ありがとうございます。お義父様・・・しばらくお世話になります。』
『あ~そんな堅苦しいことは言わなくていいんだよ。存分に甘えてほしい。』
そしてハヌルが眠っていると思しき移動式のベビーベッドを二人同時に覗き込む
『あ・・・ハヌルがいない。』
『ハヌルは・・・どこだ?』
その時・・・キッチンからミンの声がする
『ハヌルなら~ここですよ~♪』
踊るような足取りでキッチンから出てきたミンは、ハヌルを横抱きにし満面の笑みを男性陣に向けた
『メイドさんたちがハヌルを見たいっていうからついね。おほほほほ~~♪
みんなシンに似ていると褒めてくださったのよ~♪』
もう食事の準備はほぼ終わっているというのに、いつまでもハヌルを抱いて自慢げに見せびらかす母に
シンは手を差し伸べた
『母さん・・・もう食事じゃないんですか?俺が代わりますから・・・』
『いや私が・・・』
その隣ではヒョンが同じように手を差し出した
『もぉ~親子喧嘩になりそうだわ。ピョル・・・あなたにお願いするわね。』
『えっ?私?はぁ~~いグランマ♪』
ピョルはハヌルをミンから受け取ると、しっかり腕に抱きリビングの椅子に腰かけた
ピョルの周りにヒョンとシンはやはり群がる
だがピョルからハヌルを取り上げようとはせず、姉と弟の微笑ましい姿を黙って眺めている
ピョルはそんな二人に向けて笑顔で言った
『はい。グランパ・・・ハヌルを抱っこしてください~♪』
『ピョル~~♪いいのかね?』
『はいぃ~♪』
ピョルからハヌルを受け取ったヒョンは勝ち誇った顔でシンに視線を向けた
するとシンはピョルに抗議をする
『ピョル・・・パパが先だろう?』
『えぇ~~っ!だってパパ・・・すべての権利はまず目上の人からってママがいつも言ってるんだもの~!』
『っつ・・・仕方がないな。』
ヒョンはとても満足そうな顔つきでシンに話しかけた
『シン・・・ハヌルは随分重くなったな。驚いたよ。』
『そうでしょう?とても食欲旺盛だと言っていましたよ。』
『風呂は・・・もう入ったのかなあ・・・』
その時キッチンから料理を運んできたチェギョンは、ヒョンに笑顔で答えた
『お義父様・・・先ほどお義母様と二人で沐浴させました。』
『なんだ。もう済んでしまったのか・・・お!そろそろ食事のようだな。シン・・・代わろう。』
『はい。』
漸く自分の番が巡ってきたとシンはハヌルを抱き、そして椅子に腰かけた
隣の席ではピョルがハヌルを覗き込んでいる
『パパ~~可愛いね♪』
『あぁ。とても可愛いな。温かくて・・・』
そう答えながらシンはピョルの顔をじっと見つめた
(ピョル・・・お前がこんな小さい頃、どんなに可愛かっただろうな。お前が赤ん坊の頃に戻って
一度だけでいいからこんな風に抱きたい。)
叶わない夢だと思いながらも、ハヌルを抱きながらそう感じてしまうシン
この切ない想いはシンばかりでなく、ヒョンやミンも同じように胸の中にしまっておいた
口に出してしまえば自分達の不甲斐なさを思い知るだけ・・・
そんな後悔の言葉をチェギョンやピョルに聞かせたくなかった
『さぁさぁ~食事にしましょう。シン・・・ハヌルはベッドにおいてね。』
『はい。』
シンは恐る恐るベッドにハヌルを寝かせ、身体の上にブランケットを掛けた
ハヌルは大人の話し声に動じることなく、静かな寝息を立てていた
『いただきま~す。』
全員が席に着き一家揃っての食事が始まった
『母さん今日は随分ご馳走だな。』
『そりゃそうよあなた。チェギョンさんが退院してきたんですから、母乳の為にもたくさん食べさせなくっちゃ~♪』
『くすっ♪ありがとうございます。お義母様とても美味しいです。』
和気藹々と食事をする五人・・・その時ヒョンが思い出したように口を開いた
『そういえば今日・・・会社にホン社長が顔を出したんだよ。』
その来客の名前を聞きギョッとした顔をするミン
シンはヒョンに不思議そうに問い掛けた
『父さん、ホン社長といったら父さんのゴルフ仲間で、仕事上の関連はないはずですよね。』
『あぁそうなんだ。そうなんだが・・・』
『あなた!!』
ミンはヒョンの言葉を遮るように声を上げた
『ああミン・・・わかっているよ。だがチェギョンさんやピョルも聞いておくべき話だと思うんだよ。』
『そう?だったらいいんですけど・・・・』
不満そうに睨みつけるミンを気にしながらも、ヒョンは話を続けた
『ホン社長は・・・現在ミン・ヒョリンのお舅さんに当たる人だ。』
『えっ?ミン・ヒョリンは結婚したんですか?』
『ああ。うちの創立記念パーティーの後、相当焦っていたんだろうな。見合いでホン家の長男と結婚したそうだ。
ところがホン社長がパーティーの時の噂を耳にしてしまって、私に相談を持ち掛けて来たんだよ。』
『相談とは?』
『長男と嫁を離婚させた方がいいかどうかって・・・』
チェギョンとピョルは目を丸くしてその話に聞き入っている
ミンは血相を変えてヒョンを問い詰めた
ヒョンの返答次第では再び我が家に火の粉が降りかかる恐れがあった
『それで・・・あなたはなんて答えたのです?』
『そりゃあもちろん・・・そんなことはなかったと・・・。
全てなかったことにしたよ。うちの息子と別れた理由も≪性格の不一致≫だと言った。』
『でかした!あなた・・・それでいいんです。余計なことに首を突っ込まない方がいいんですよ。』
『いやそれが・・・聞いたところによるとホン家の長男はミン・ヒョリンに相当惚れこんでいるらしくて
その上妊娠初期だと聞いたものだから・・・余計な波風は立てちゃあいけないと思ってね。』
『まぁ~~~♪妊娠なさったの?めでたいわ~~♪これでもう・・・うちとは関わりがございませんからね。
良かったわ~~♪ね~~チェギョンさん。』
いきなり話を振られたチェギョンは、戸惑いながらも同意した
『はい。本当に良かったです。あの方もきっとやっと掴んだ幸せを逃がさないようにふるまうでしょう。』
チェギョンにしてみたら10年間の間に、ヒョリンがシンに惹かれなかったことが不思議だったのだ
別れた後になって未練がましくされても非常に困るのだ
もうシンは今・・・チェギョンの夫であり、二人の子の父なのだから・・・
『ふ~~ん。あのおばちゃん・・・よかったよね~~♪あはははは~~~♪』
『本当ねピョル~~♪もう変なこと心配せずに済むわ。おほほほほ~~~♪』
一卵性祖母孫は満面の笑みを浮かべ、テーブルの上で手を握り合った
その時・・・仲間外れにされた櫓思ったのか、ハヌルが大きな声で泣きだした
『うぎゃ^^^^っ!』
『あ・・・ハヌルが起きちゃったわ。チェギョンさん・・・早くお部屋に戻ってお世話してあげて。』
『あ・・でもお義母様、食事の後片付けをしないと・・・』
『もぉ!産後に水仕事は良くないの!早くお行きなさい。』
『はい。すみません。』
移動式ベビーベッドを引きながら部屋に戻っていくチェギョンにシンはついていった
『チェギョンこの部屋で過ごすのか?』
『ええそうよ。』
部屋を開けたシンは、置かれているベッドが狭いセミダブルだと知るとチェギョンに提案した
『チェギョン・・・俺の部屋に来たらどうだ?俺の部屋のベッドは広いし・・・俺もハヌルの面倒が見られる。』
『シン君・・・ダメよ!このくらいの赤ん坊は昼夜問わず目を覚ますの。
あなたはただでさえ神経質だから、その度に目を覚ましてしまうでしょう?お仕事に差し支えるわ。』
『ダメなのか・・・』
『ダメに決まってる。』
『じゃあ・・・しばらくここにいても?』
『ええ、それだったら構わない。』
シンはハヌルの世話をするチェギョンを静かに見つめながら、ハヌルが眠るのを待ってそれからチェギョンと
久し振りにゆっくり会話を楽しんだ
そのうちには入浴を済ませたピョルもその部屋に顔を出し、親子水入らずの時間を楽しんでいた
だが・・・やはり母心の強いミンは、そんな四人の邪魔をしにやって来る
『まぁ~みんなここにいたのね。さぁ~シン!早くお風呂に入っておやすみなさい。
ピョルは今夜グランマの部屋ですからね~♪』
『は~~いグランマ♪』
ピョルは素直に言うことを聞くのに、その場を動こうとしないシンをミンは叱る
『シン!チェギョンさんはハヌルが寝ている間に少しでも休まないとダメなのよ。
もう少し妻を労わったらどうなの?』
『・・・解りました。』
さすがにそこまで言われたら部屋を出ていくしかないシン・・・
そんな風にしてイ家はハヌルを迎え、賑やかで充実した日々が過ぎていった
明日はハヌルの一カ月検診の日・・・チェギョンの元に店の責任者のチェから連絡が入った
『オーナーお加減はいかがですか?』
『ええ、おかげさまでもう少しでそちらに戻れそうです。』
『あ・・・それがオーナー、大変なことになったんです。』
『大変なこと?』
チェの報告にチェギョンは目の前が暗くなった
それは・・・店の売り上げにも響く出来事であり、ミンにとっては願ってもない方向に話が進みそうな報告だった
さて・・・チェさんからの報告は
一体どんな話でしょうね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
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