父親参観の日・・・ピョルはシンからプレゼントされた手提げかばんを持って、いつもより嬉しそうに登校していった
チェギョンは娘のそんな姿を見送りながら、益々父親の存在の必要性を感じていた
やがて開店時間となりチェギョンはスタッフと共に店を開けた
するとそれを待っていたかのように、取引先の社長イ・ユルが納品に訪れた
『こんにちは~。チェギョン・・・急ぎの商品を持ってきたよ。』
『あ・・・ありがとう。ユル君。』
ユルは商品を置きながら店の中をきょろきょろと見渡し、チェギョンに問い掛けた
『あれっ?今日・・・ピョルはいないの?』
『あ・・・ピョルは今日、登校日なのよ。』
『んっ?あっ!もしかして父親参観日じゃないの?シマッタ!僕としたことが忘れていたなんて・・・。
チェギョンもチェギョンだよ。一言言ってくれなきゃ・・・』
『あ・・・ごめんねユル君。今日はお友達が参観に行ってくれているのよ。』
『お友達?まさか・・・あの時の男?』
『ええ。そうよ。』
『どうして?毎年父親参観日には僕が行っていただろう?』
『ピョルが直接、彼にお願いしたのよ。だから気を悪くしないでね。
それにユル君・・・私ね、あの人とお付き合いを始めたの。』
『お付き合い?って・・・』
『子持ちの女に交際を申し込むなんて、物好きもいたものよね。くすくす・・・
だからユル君・・・今後は彼が、父親参観日に行ってくれると思うわ。今まで面倒かけてごめんね。』
『それってつまり・・・あの男との結婚を考えているってこと?』
『・・・ええ。考えているわ。』
『僕は?僕の事は少しも頭を過らなかった?』
『ごめんなさい。ユル君は純粋にピョルを可愛がってくれていたのを知っていたけど、
私が男性として考えたことは一度としてなかった。』
『・・・っつ・・・』
悔しそうな顔つきで踵を返したユル・・・チェギョンはその後ろ姿を見送りながら自分に落ち度があったと反省する
(ピョルの言っていたことが正しかった。ユル君は私を仕事上のパートナーとして見ていたんじゃない。
傷つけてしまった。)
期待させるような態度を取ったことはない
ただピョルの学校行事にユルが参加するのを拒まなかっただけだ
実際チェギョンはユルに誘われたこともない
もちろんそれはユルが気を遣っていたからなのだが・・・
ユル自身はピョルの父親代わり・・・いや、何れは父親になりたいと願っていたのだ
こんな風に男女の感情の行き違いは、時として起こりうるものなのである
待望の父親参観日・・・ピョルは一番後ろの席で、教室に入ってくる父兄をじっと観察していた
(あと三分で授業が始まっちゃう。パパ❤・・・遅いなぁ。)
続々と教室に入ってくる父兄達を見つめながら、ピョルはシンの姿を心待ちにしていた
すると授業開始ギリギリになって、父兄の一番最後にシンは教室に姿を現した
(あっ!パパだ~~♪)
ピョルはシンに向かって満面の笑みで手を振った
シンもすぐピョルに気が付き、少しはにかみながら小さく手を振った
並んだ父兄の中で一番長身のシンは、容姿だけでなく雰囲気さえも洗練されていて父兄達の視線は
シンに集中した
中には噂話をしている父兄もいるようだ
(あの人・・・誰のお父さん?)
(さぁ・・・初めて見る顔だけど・・・素敵な人ね。)
ピョルはそんな様子を見て、誇らしげに前を向き授業に集中した
賢いピョルはシンにいいところを見せたいという思いもあり、授業中何度も手を上げ教師から質問された折には
的確な回答を答えてみせた
その頭の回転の速さは、シンも驚くほどだった
なんだかとても誇らしい気分になった時・・・教室の扉を開け、遅れた父兄が入ってきたようだ
(あぁっ?この男は確か・・・イ・ユルとかいう男じゃ?)
ユルはシンを一瞥するとすぐに目を逸らし、父兄の最後尾に並んだ
そして当たり前のようにピョルを見つめている
そんな様子を見てシンは非常に面白くない気分に陥っていた
だがそれはユルも同様だった
ずっと見守ってきたチェギョンとピョルを、突然現れたトンビに奪われた気分になり
いてもたってもいられなくなったのだ
この機会を逃したら二人は永遠に手に入らないような気がして、悪足掻きと思いながらも
呼ばれもしない父親参観に来てしまったのだ
父親参観が終わり児童達がホームルームをしている間、児童と一緒に帰る父兄は廊下で待つこととなる
ユルはその場で漸く、シンに声を掛けた
『イ・シンさんでしたっけ?ピョルは僕が連れて帰りますので、どうぞお帰り下さい。』
『いや・・・私はこの後ピョルと約束があるので、君がお帰り下さい。』
大の大人二人が・・・まるでピョルを争う恋敵のような光景だ
そこにホームルームを終えた児童達が、父兄目がけて教室から飛び出してくる
ピョルがシンに向かって駆け寄った時・・・その背後にいるユルの存在に気が付き、相当動揺したようだ
『ゆ・・・ユルさん!ユルさんも来てくれたんですか?』
『うん。そうだよ。ピョル~ダメじゃないか。早く知らせてくれないと。さぁママが待っているだろう?僕と帰ろう。』
するとピョルはシンの手を握り締めユルに告げた
『あ~ユルさん。せっかく来てくれたのにごめんなさい。シンさんと約束しているんですぅ~♪
だからまたお店でお逢いしましょう~♪』
そういうなりピョルはシンの手を引っ張った
シンもその手を握り返し、ユルに優越感に満ちた視線で会釈をした
『そういうことだから失礼。』
シンと手を繋いで歩くピョルの姿を見送りながら、ユルは敗北感でいっぱいになった
(なぜ?チェギョンもピョルも突然現れたあの男を尊重するんだ!)
そう思いながらも二人が歩いていく姿を見ていると勝てる気がしないユル
それはきっと二人の間を流れる血の絆が、シンとピョルにあるからなのだろう
『あぁ~美味しかった~♪ご馳走様でした。』
『ピョル・・・デザートは食べないのか?』
二人きりで楽しいランチを済ませた時、シンはピョルにそう問い掛けた
ピョルはその言葉に目を真ん丸くすると、何かを思いついたかのように答えた
『あ~デザート♪デザートといえば・・・≪デザートは別腹のおばちゃん≫に逢いたいな~♪』
『デザートは別腹のおばちゃん?くっ・・・母さんの事か。』
『はいぃ~♪このお店、美味しそうなケーキがいっぱいあるから・・・お土産に持って行ったらいいかなって。
あ!私~お小遣い持ってきたんですぅ~♪』
『馬鹿だな。子供がそんなこと気にするのはよくない。少し待っていてくれ。母さんの都合を聞いてみる。』
実家に行けば折り入って話がしたい父もいる
会社では自分の恋愛話など相談できる筈も無いし、丁度ピョルも母に逢いたがっている
シンにとってこれは一石二鳥のタイミングだった
すぐにシンは携帯電話を取りだすと、ミンに連絡を入れた
『母さん・・・今家にいらっしゃいますか?父さんは?そうですか。
今からピョルを連れて伺いたいのですが・・・。
構いませんか?はい。では後程。』
ピョルにはシンと会話しているミンが、電話の向こうで満面の笑みを浮かべているのが見えるようだった
(グランマ~今、おうちに行きまぁす♪待っててくださいね~~♪)
シンをすっかり陥落させたピョル
ピョルの次なるターゲットは、どうやらグランパの説得に移行したようだ
シンと選んだケーキの箱を膝に抱え、ピョルは堂々とイ家に乗り込むのだった
イ家での様子まで書きたかったのだけど
今日はいろいろうちの中を出入りする人が多くってね・・・
ここでつづくにしちゃう(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
すまんですぅ・・・
今日さ・・・ガス屋さんの点検があって
家に入ってきたガス屋さんとふぅちゃんが鉢合わせして
双方・・・固まってました。
見ていて実に面白かった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!