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Channel: ~星の欠片~
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陽の当たる場所 1

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≪このお話は恋形見の続編となります≫


陽の当たる場所



ここはイ家のリビング・・・ここには満面の笑みの女主人ミンと戸惑いを隠せない夫ヒョン・・・

そして息子のシンが並んで腰かけ、その向かいにはこれまた非常に戸惑った様子のシン・チェギョンと

屈託なく笑みを浮かべる娘のピョルが座っていた

『あ!そうだわ~先程のお店でデザートまで食べられなかったでしょう?
おばちゃん・・・あのお店のケーキをテイクアウトしてきたのよ~♪
ピョルちゃん・・・もちろん食べるでしょう?』
『はいぃ~♪もちろんですぅ♪』

間髪入れずにそう答えた娘にチェギョンは苦言を呈した

『ピョル!たった今お食事を頂いてきたばかりでしょう?お行儀悪いわよ!』
『『え~~だって~~ケーキは別腹~♪』』

驚いたことにぴったり息の合ったデュオのようにシンクロするミンとピョルのセリフ

チェギョンは呆気に取られてしまった

(あぁ・・・血は争えないというけど、ピョルの性格は彼のお母様譲りだたのね・・・)

『ささっ・・・ピョルちゃん~じゃあケーキを選びに行きましょう~♪』
『はいぃ~♪』

いそいそとキッチンに向かうミンの後をピョルは小走りに追いかけた

ミンとピョルがキッチンに向かった時、シンはチェギョンに話しかけた

『チェギョン…ちょっと庭に出ないか?話したい話もあるし・・・』
『ええ。』
『父さん・・・ケーキが来たら先に食べていてください。私たちはちょっと話をしてきます。』
『あ?ああ・・・わかった。』

そしてイ家のリビングには蚊帳の外にされたヒョンだけがぽつんと取り残された・・・




『さて~ピョルちゃんは何がいいかしら~?』

ミンはテイクアウトしたケーキの箱を開け、ピョルに見せた

『わぁ~おばちゃん、いっぱいありますぅ~♪』
『どれが美味しいかしらね~♪好きなのを選んでね。』
『はいぃ~♪でもおばちゃん・・・人数よりたくさんありますよぉ~♪』
『ピョルちゃんがたくさん食べてもいいようにって、おばちゃんいっぱい買ってきたのよ~♪
食べきれなかったらおうちに持って帰ったらいいわ。』
『本当に~?わぁ~どうしようかな。どれも美味しそうだな~♪
えっと・・・このイチゴがいっぱい載ったケーキを食べてもいいですかぁ?』
『いいわよ~♪じゃあこれはピョルちゃんのね♪』
『はいぃ❤』

其々のケーキを皿に乗せながら、ミンはさりげなく探りを入れた

『ピョルちゃん・・・お父さんに逢ったことはないの?』
『えっ?はい。ありません。』

一瞬その顔から笑顔が消えたことで、ミンはピョルを傷つけない様言葉を選んだ

『そう。寂しかったでしょう?』
『いいえ~そんなことありません。お店にはお兄ちゃんもお姉ちゃんもおじちゃんもおばちゃんもたくさんいて
いつも賑やかですから~♪』
『逢いたいと・・・思ったことはない?一体どんな人なのかしらね~♪』
『逢いたいと思ったこともあるけど・・・ママにもいろいろあるんでしょう。
そうそう!私と同じ左利きの人で、すごくかっこいい人だとママが言っていました~♪』
『!そう❤ピョルちゃんのパパなら、きっとものすごくかっこいい人に決まっているわ~♪おほほほほ~♪』
(左利き・・・それはまさしくシンの事を言っているのね。さぁさぁ~この降って湧いたような嫁と孫の出現。
私が何とか形にしなくっちゃね~♪)

ピョルと一緒にケーキを運びながらミンは心が踊って仕方がない

早く皆に言いふらしたい

だが・・・そんなことをしてもしピョルが傷ついたら大変だとその気持ちを必死に抑えた

(慎重に事を運ばないと・・・)

そう思うミンだった

『ピョルちゃん・・・おじちゃんにこのチーズケーキを渡してね。』
『はいぃ~♪』

其々の席の前にケーキが置かれた時、ミンはシンとチェギョンがその場にいないことを夫に尋ねた

『あなた・・・シンとチェギョンさんは?』
『あ~なんでも話をしてくるといって、庭に出て行ったよ。先にケーキを食べていてくれと言っていた。』
『そう。じゃあピョルちゃん召し上がってね~♪』
『は~~い。いただきま~す♪』

子供らしく遠慮などせずにピョルはフォークを左手に持ち、ケーキを食べ始めた

シンの父ヒョンはその様子を見て小さく呟いた

『ピョルちゃんも左利きなんだな。』

それを聞いたミンは心の中で毒づいた

(はぁっ・・・シンが鈍いのはあなたの血を引き継いだからね。
この重大な秘を私とチェギョンさんだけしか知らないなんて、なんだか優越感を持つと共に責任重大だわ。)




その頃シンとチェギョンは庭に置かれたベンチに腰掛け話をしていた

『チェギョン・・・ピョルの父親とはなぜ結婚しなかったんだ?』
『えっ?あぁ・・・それは、結婚できる相手じゃなかったからよ。』
(ふぅ・・・その辺りあまり突っ込まないでほしいなぁ・・・)
『そうか。よく一人で産む決断をしたな。そんなにその男が好きだったのか?』
『うんそうよ。でも一人なんかじゃなかった・・・お店のスタッフさんも一緒に子育てしてくれたようなものだから
何も困らなかったわ。何しろピョルがいてくれたおかげで、毎日がとても楽しかったし・・・』
『そうか。君は幸せだったんだな。』
『シン君・・・は?』
『俺の事を聞くのか?くくっ・・・10年を費やしても溝が埋まらなかった結婚だ。』
『いつ別れたの?』
『つい一カ月ほど前だ。』
『そう・・・』
『だから今更だとは思ったが、君の前に姿を現したんだ。』
『私の前?ピョルに逢っていただけじゃない。くすくす・・・』
『君に堂々と逢いに行く勇気がなかったんだ。でも俺はこの絶好のチャンスを逃がす気はない。
また、昔のように付き合えないか?』
『・・・シン君、シン君にも10年の間にいろいろあったように、今の私にはピョルがいるのよ。
あの頃と同じようにとはいかないわ。』
『もちろんそれもわかっている。だがピョルの父親と結婚する意志がなくて、あのイ・ユルという男が
君の恋人じゃないなら・・・ピョルも君の一部だと受け止めている。
時間がかかってもいいから俺の事を考えてほしい。』
『解ったわ。よく考えてみる・・・』

この時シンは見えない敵に戦いを挑んだ

それはピョルの父親の存在だった

まさかそれが自分自身であるとは・・・鈍感なシンは全く気付いていなかった

『そろそろ戻らないと・・・』
『あぁ。チェギョン・・・携帯番号変わっているのか?』
『いいえ昔のままよ。』
『また食事に行こう。』
『ええ。』

まずは友達から旧交を復活させようとシンは思ったようだ

もちろんリビングで二人が戻って来るのを待っているミンは、何とかして二人を一日も早く一緒にさせたいと

考えていた



『どうもお邪魔しました。』
『おばちゃん、お土産のケーキまで貰っちゃって~ありがとうございます♪』
『いいのよ~またいらしてね。』
『は・・・はい。』
『はぁ~い!』

シンの車でチェギョンとピョルが帰っていった後、ヒョンはミンに問い掛けた

『母さん・・・シンが子供のある女性とお付き合いするのを、賛成する気なのかい?』
『あなた!目先の事だけを見ちゃあダメよ。もっと深~く見なくちゃ、真実はわからないでしょう?
おほほほほ~~♪』

そんな鈍感なヒョンの言葉を、いつかヒョン自身が後悔する日が来ることを思いながら

それでもミンはチェギョンとの約束とばかりに秘密を守った

口がムズムズして非常に話したかったが、シンとヒョンにはその鈍さを反省する必要があると感じたようだ

(チェギョンさんのお店・・・明日行っちゃいましょう~♪)

調べたところ店と住居は一緒になっている

明日もピョルに逢えるかもしれない・・・そんな期待を胸に抱きミンはこの家の明るい未来を心に描いた





翌日・・・やはりお昼休みの時間、シンはチェギョンの店を覗きピョルがいることを確認し

ソフトクリームを買いに行くために道路を渡ろうとしていた

その時・・・自分の背中に向かって声が掛けられた

『シン君!』

それはまさしくチェギョンの声だった

振りむいたシンはチェギョンの元に向かう

『昨日はご馳走様。』
『いや、俺こそ突然家に連れて行ったりしてすまなかった。』
『今日はソフトクリームはいらないわ。』
『えっ?なぜだ?』
『シン君・・・お昼休みにここまで来ると昼食が食べられないでしょう?ピョルもお昼ご飯まだなのよ。
賄いが作ってあるの。一緒に食べて行って。』
『本当に・・・いいのか?』
『うん。シン君の分もあるから。あ・・・でも簡単な物よ。』
『あぁ。喜んでご馳走になろう。』

10年前・・・あまりに短い二人の時間の中で、チェギョンの手料理など食べる機会がなかったシン

また10年という長い結婚生活の中で、元妻の手料理も食べたことがなかった

『シンさ~~ん、ご飯食べよ♪』
『あぁピョル・。』

ピョルに手を引かれて店の奥にあるリビングに通されたシンは、テーブルの上に出来立てのパスタとサラダ

そしてアイスコーヒーが置かれていることに気が付いた

『いただきま~~す♪』
『いただきます。』

二人揃って左手にフォーク右手にスプーンを持ち、くるくるとパスタを巻き付ける

『美味しいでしょ?ママのパスタ。』
『あぁ。とっても美味しい・・・』

なんだか幸せで胸が一杯になってしまったシンを横目で見ながら、ピョルは胸の中で呟いた

(あ・・・あれっ?シンさん・・・左利きだ!!)

どうやらピョルはシンガ左利きであることに気が付いてしまったようだ




イメージ 1

子供の勘の鋭さは~侮れませんな(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

ピョルはどうやらミン様似の性格のようです。
恋形見の続編・・・
どうぞよろしくお願いします~❤



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