少し微睡んだみたい・・・私は自分の額に置かれた冷たい手の感触でうっすら目を覚ました
聞こえてくる声の様子では、どうやらお姉ちゃんと看護師長さんがお話しているようだ
『まだ妃宮様は熱が高いようです。』
『そうですか・・・では・・・』
鉛のように重い身体を私はゆっくりと起こした
『あ・・・大丈夫です。授乳の時間ですか?』
『はい。妃殿下・・・大丈夫ですか?』
『はい。大丈夫です。熱があってもお乳をあげて構いませんか?』
『大丈夫です。』
ベッドに腰掛けた私に、看護師長さんは赤ちゃんを渡してくれた
小さく泣き声を上げる赤ちゃん。そう・・・お腹が空いたのね?
改めてじっくりと我が子の顔を眺める
やはり私に似ているかも・・・♪そう思った私に看護師長さんは教えてくれた
『妃殿下・・・この病院では新生児の取り違えがないように、生まれてすぐ足にナンバリングのついた
リングがつけられます。これは私にしか取り外すことができないものです。
それが付いたままなので間違いはございませんが、念の為妃殿下との親子鑑定をさせました。
間違いはないとの結果が出ております。どうぞご安心ください。』
『お手数おかけしました。ええ、間違いなくこの子は私の子です。』
『では授乳が終わった頃、また参ります。』
『はい。』
看護師長さんが去った後、私は手早くオムツを取り替え手を洗いまた我が子を横抱きにした
そしてお乳を含ませ飲ませる
コクン・・・コクン・・・すごい勢いで飲んでいる
この子は私のお乳の味が気に入ったみたい
飲みながら小さな手は私の乳房に触れた
体温の高い赤ちゃんより、私の体温の方が今は熱い
この子が本能的に握り締めたミン・ヒョリンの指は・・・氷のように冷たかったに違いない
氷ほども冷たくなっていたミン・ヒョリンを止められたのは、きっとこの子の持つ生命力だろう
すごいわ・・・こんなに小さいのに、ミン・ヒョリンをあなたが戒心させるなんて・・・
この生命力逞しい我が子がお乳を飲む度に、私の体温は少しずつ正常に向かうように思えた
再び看護師長が現れ、我が子を連れて行きながら告げた
『妃殿下・・・ただいまお食事をお持ちいたします。昨晩から何も召し上がっておりません。
お祝い御膳を用意いたしましたので、たくさん召し上がってください。』
『あ・・・ありがとうございます。』
そう言われてみれば確かにそうだ。入院した時、分娩前に出された食事が最後だったことを思い出す
ぐぅ~っとお腹が鳴る
それを聞いていたお姉ちゃんは、クスリと笑った
『妃宮様・・・漸く空腹を感じられるようになったのですね。安心いたしました。』
本当に・・・そんなこと感じる心の余裕さえなかった
運ばれてきたお祝い御膳はギョムを生んだ時よりも豪華に思えた
お姉ちゃんは各食材を毒見し、それから私に食べるよう促した
『美味しい・・・とても美味しいわ。』
『病院側の特別な配慮なのでしょう。本当に美味しい食事です。さぁ・・・どうぞお召し上がりください。』
そういって私の前にすべての料理を置いたお姉ちゃん・・・でもお姉ちゃんは食事したの?
きっと心配で何も食べていないんじゃないの?
心配になって私は問い掛けた
『チェ尚宮お姉さんは・・・食事なさいました?』
『妃宮様・・・どうぞご心配なく。私は朝食を宮から届けていただきました。それに昼食も届くことでしょう。』
『本当?』
『はい。本当です。さぁ召し上がってください。』
安堵してお祝い御膳に手を伸ばす私。ひと口食べるほどに…自分の空腹感が増していく
私は食事しながらお姉ちゃんの報告を聞いた
『イム親子に関しましては、チョン女官が取り仕切り指導しておりますのでどうぞご安心ください。』
『皆さんにはお手数をおかけします。』
『何の心配もございません。イム女官はチョン女官と同期ですから、気心も知れています。
それにイムさんも内親王様をお迎えする準備を、一生懸命しているとのことです。』
『そうですか。良かったです・・・。』
私の下した決定に、皆快く賛同してくれてよかったと安堵する
『イムさんに関しましては、常に女官が交代で見張る形になりますが・・・それは致し方ないことでしょう。
きっと真面目に更生してくれるはずです。』
『私もそう思います。それ以外の待遇は他の方と同じにしてくださいね。
決して罪人扱いなどしないように・・・』
『はい。重々承知しております。』
さすがお姉ちゃんは、私の事をわかってくれている
お姉ちゃんと話している間に、お祝い御膳はすっかり空になっていた
はぁ~お腹がいっぱいだ
『では妃宮様・・・もうしばらくお休みください。夕方にはギョム様が殿下とご一緒に来られるとの事です。』
『えっ?ギョムが?』
『はい。早く内親王様にお逢いしたいと仰って・・・』
『解りました。もう少し休みますね。』
食事が下げられた後、私は再びベッドに横になり目を閉じた
宮に戻り食事を摂って自室で横になった俺は、精神的な疲労もありすぐに眠りに落ちた
しかも余程疲れていたのだろう
着替えもせずスーツ姿のままソファーで眠ってしまったようだ
だが・・・午後になると騒がしい声が、俺の眠りを妨げた
『とうさま~?とうさま~?あれ?ベッドにいないや・・・。とうさま、どこに行ったのかな?
あ~~!とうさま見つけた♪どうしてソファーで寝てるんですかぁ?』
あぁぁ・・・ギョム、耳元で大きな声を上げるな
『あ・・・あぁ、今起きるよ。』
『じゃあ~僕のいもうとをみにいきましょう~♪』
『あ・・・いやもうちょっと待ってくれ。シャワーを浴びて着替えないとな・・・。お母様と妹に逢いに行くんだから。
男は身だしなみが大事だろう?』
『あ~そうでした。じゃあ僕は・・・ホン・ジュソンさんに遊んでもらって待っていますぅ。』
『あぁそうしてくれ。』
チェギョンがフルネームで呼ぶからか、ギョムは他のイギサには姓で呼ぶが
ホン・ジュソンだけはフルネームで呼ぶ
またその特別扱いが嬉しいのか、ホン・ジュソンのギョムに対する忠誠心は俺たち以上だろう
手早くシャワーを浴び着替えを済ませた俺は、エントランスに向かっていった
するとギョムは東宮にいる新しい職員に話しかけているようだ
『おばちゃんは・・・初めて見る人です。僕はギョムです。』
『あ・・・あの・・・私はイムと申します。妃殿下から内親王様のお世話係を仰せつかりました。』
『ないしんのう?僕のいもうとですか?僕のお世話はしてくれないのですか?』
『あ・・・それは・・・』
相当困った表情のイム元看護師・・・いや、今は内親王の世話係だ
するとそこにチョン女官とイム女官がやってきて、ギョムに話しかけた
『ギョム様・・・新しい女官を紹介いたします。イム女官です。
イム女官はギョム様のお世話をさせていただきます。』
『同じ名前ですね~。』
『はい。親子なんです。私はイム女官と申します。ギョム様がお生まれになる前に、
皇帝陛下の元で女官をしておりました。この度妃宮様から東宮の女官に任命され、宮殿に戻ってまいりました。
どうぞよろしくお願いいたします。』
『はい!よろしくおねがいしますっ!』
ギョムは以前ホン・ジュソンがイギサとなった時にしたように、イム女官に握手を求めた
イム女官は恐縮しながらその手に応えた
その後ギョムはイム世話係にも握手を求めた
イム世話係は心底恐縮しながらギョムの手を握り締めた
きっとギョムの手の温かさは、イム親子の心の奥底まで温めたことだろう
そんなギョムの性格は、やはり俺に似ているのではなくチェギョン譲りなのだろうと思った
なぜなら俺は本心からイム元看護師を許すことなどできないからだ
あんなに愛らしい娘をミン・ヒョリンンの元に連れて行くなんて・・・許せない所業だ
だがチェギョンが決めたことだ。時間をかけて許すよう努力していこうと俺は思った
『ギョム・・・出かけよう。』
『あ!!とうさま~いきましょう♪』
俺がその場にいたことに気が付き、道を開け隅によけ深々と頭を下げるイム世話係
チェギョンの思いを二度と踏みにじらないでくれ・・・そんな視線を一瞬送り、俺はギョムと共に公用車に乗り込んだ
特別室に入って行くとチェギョンは娘の授乳中だった
『あ~~~っ!』
ギョムはチェギョンに駆け寄り、娘の顔を見ようと必死になっている
俺はギョムを抱き上げ、娘の顔を見せてやった
『ギョム…お利口にしてた?』
『はい!とてもおりこうにしていますぅ。あ~~・・・かあさまとそっくりだぁ~♪かわいいなぁ・・・』
耳元で響くギョムの声が気になったのか、娘は一瞬お乳を飲むのをやめギョムの方に顔を向けた
とはいってもまだ目が開いているわけではない
すぐにお乳を口に含み飲み始めた
『おっぱい飲んでますね~♪』
『ギョム・・・羨ましいのか?』
『そんなこと~ありません。僕は赤ちゃんじゃないですからね~!もうお兄ちゃんですから~♪』
そうか?俺は赤ちゃんじゃないが娘が少し羨ましい・・・と思った心の呟きは、とても口には出せまい
あつい・・・
いきなりこのところ暑すぎますね。
九州の皆様、雨の被害はなかったでしょうか。
この暑い中・・・明日は三者面談なんですぅ。
夕方いってきます~♪
訂正
三者面談は水曜日なんだって(号泣)
いきなりこのところ暑すぎますね。
九州の皆様、雨の被害はなかったでしょうか。
この暑い中・・・明日は三者面談なんですぅ。
夕方いってきます~♪
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三者面談は水曜日なんだって(号泣)