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Channel: ~星の欠片~
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蒼い月 30

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大学四年生の秋・・・私は第二子を身籠った

シン君はもっと早く二人目の顔が見たいと言っていたのだが、私が待ったをかけたのだ

なぜなら皇太子妃としての公務も学業も・・・そして母としての役割さえもすべて人任せになってしまうようで

嫌だったからだ

大学卒業の目途が立ち漸く私からOKサインを出したら、シン君ったら早速だなんて・・・ふぅ・・・

その頃にはギョムも三歳になり、おしゃべりが活発になっていた

子供ながらに鋭い質問を投げかけて来るので、私はいつもドキドキしていた

今日はシン君がどうやら私が妊娠したことを告白するらしい

『ギョム・・・ギョムに弟か妹が生まれて来るんだよ。』
『えっ?とーさま・・・どこから生まれて来るんですか?』
『お母様からだ。』
『かーさま?かーさまのどこからですか?』

そんな難しいことは大人になってからでいいのよギョム・・・

『お母様のお腹がどんどん大きくなって・・・そうしたらポンッ!って生まれてくるのよ~♪』
『えっ?かーさまのおなかからポン?』
『そうよ~ギョム。』
『じゃ・・・じゃああかちゃんは、かーさまのお腹を破ってでてくるんですか?
かーさま・・・しんじゃうんですか?』

ギョム・・・赤ちゃんをエイリアンかなにかと勘違いしてない?

私が戸惑っているとギョムは顔をくしゃくしゃにして泣き始めた

『あーーーん!そんなのいやです!かーさまがいなくなっちゃうならあかちゃんいらないですぅ~~!!』

魔ってギョム違うったら・・・まったく妄想力の強い息子だわ

私がギョムを宥めようとしていたら、シン君はすかさずギョムを抱き締め優しく諭した

『ギョム・・・お母様がいなくなるはずないじゃないか。
赤ちゃんはお母様のお腹を破ったりしない。その時が来たらお母様のお腹が開くんだ。
だから心配いらない。もう泣くなギョム…』

シン君!私のお腹が開くだなんて・・・それじゃあ私は何かのロボットみたいじゃないのぉ~~~!

でも不思議とギョムにはその説明が納得いったらしく、小さな手の甲で涙をぬg拭い私に視線を向ける

『ホントですか?かーさま・・・』
『えっ?えぇ・・・本当よ。』

シン君ったら私にまで嘘を吐かせるなんて・・・でもそんなのきっと大人になったら自然にわかることよね

嘘にはならない筈・・・

ギョムは漸く笑顔で私に抱きついてくれた

この笑った顔ってシン君の笑顔ではない。ひょっとして私に似たのかな?




その後・・・私の第二子懐妊は発表され、みんなが就職活動で頑張っている頃

私は穏やかで幸せな日々を過ごした

そんなある日大学でガンヒョンが息を切らして私の元にやってきた

『チェギョン・・・やったわ。一流出版社に内定を貰ったのよ。』
『やったじゃないガンヒョン。おめでとう~♪』

何社か出版社の採用試験を受けていたガンヒョン・・・編集者になるのが夢だと言っていた

その夢が叶うんだ~♪

これはひょっとするとギョン君との結婚は先延ばしになるのかな

『いつか・・・アンタの描いた絵本を出版するわ。』
『えっ?私の描いた絵本?』
『ええ。アンタそういうの好きでしょう?』

いやぁ確かに好きだけど、それは皇室のしきたりに反することになる

『無理だよ~ガンヒョン。私は印税なんて受け取れないし、自分の利益になるようなことは・・・』

思ったままを口にした時、ガンヒョンはニタリと笑った

『馬鹿ねなに言ってんの?印税なんかすべて寄付するに決まってるでしょう?
アンタの利益にならなければ皇室側も文句は言えない筈よ。
それに民間から嫁いだ皇太子妃の描いた絵本なんて・・・アタシにしか出版できないと思わない?』

確かにそうだけど・・・

『これでアタシは出世街道まっしぐらだわ。』
『でもガンヒョン・・・ギョン君はどうするの?』
『ギョン?結婚するわよ。二人の休みの日を何とか折り合いつけてね。
だからチェギョン・・・考えておいてね♪アンタの描いた絵本・・・是非世に出したいから。』
『うん・・・』

そうは答えたけれどギョン君とガンヒョン大丈夫かな・・・

私の中に少し不安は過ったけれど、ガンヒョンが就職することを許したギョン君だもの、

きっと上手くやってくれるに違いない

心配事はあまりしない方がいい・・・お腹の中の子も心配になってしまう

そう思い私は≪取り越し苦労はやめよう≫そう心に決めた



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チェギョンのお腹が少しずつ膨らんでいくのを、俺とギョムは毎日楽しみに眺めていた

『とーさま・・・ぼくのおとうとかいもうとって・・・一体どっちなんですか?
ぼくは両方いっぺんにかーさまが生んでくれたらいいと思うんですがぁ・・・』

くくっギョム、そう都合よくいく筈がないだろう?

『いや両方はきっと無理だろう。どちらかは生まれてくるまでのお楽しみだ。』
『えっ?そうなんですか?う~~ん・・・そうですね。どっちかの方がいいです。
だって僕のぬいぐるみを両方に取り合いされたら大変です。』

僕のぬいぐるみというのはホン・ジュソン率いる元相撲部五人組がくれた贈り物に入っていたものだ

もうボロボロのぬいぐるみなのだが、ギョムは眠る時こいつを抱き締めて眠る

あちこち綻んでしまったのを、チェギョンが当て布をして縫ってやり今でもギョムの一番の宝物だ

『そうかギョム・・・それを生まれてきた赤ちゃんに貸してあげるのか?えらいな。さすがお兄ちゃんだな。』
『えへへ~♪でも貸してあげるだけです。あはっ♪』

なんて屈託のない子に育ったのだろうか

俺のように斜に構えたところのないギョムがとても羨ましくそして愛おしく思う



そんなある日チェギョンからガンヒョンの就職が内定したことを聞き、俺は翌日大学でギョンに問い掛けた

『ギョン・・・ガンヒョンの就職が決まったそうだな。』
『うん。ガンヒョンはすごくやる気を出しているよ。』
『そうか。結婚は・・・どうするんだ?』
『入社してすぐ・・・一緒に休みが取れた時に式だけは挙げようと思っている。』
『挙式だけ?』
『ああ。結婚披露パーティーはまた後日でもいいかなって・・・』
『良くお前の家が許してくれたな。』
『仕方ないよ。ガンヒョンはこれからの出版業界を担う逸材らしいからさ~♪』
『じゃあ・・・結婚はできるんだな?』
『当り前だろう?夫婦共働きで頑張るさ~♪』
『家事も手伝ってやれよ。ガンヒョンの負担が増えたら夫婦関係に亀裂が入ってしまうからな。』
『ああ心配するなよ~♪』

皆自分の未来に向かって歩き始めた

俺達も親として皇太子夫妻として、未来を見つめ頑張らなきゃいけないと感じた穏やかな秋の日だった





瞬く間に月日は流れ・・・俺達は無事大学を卒業した

学業を終了したのだからこれからは公務に力を入れなければならない

チェギョンも6月に出産を控え、公務を制限し宮殿内でギョムの教育に当たっている

そんなある日・・・コイギサが執務室を訪れた

『殿下・・・コです。失礼してもよろしいでしょうか?』
『あぁどうぞ。』

コイギサは自分の後ろにどうやら新任のイギサを伴ってきたらしい

『殿下・・・東宮に配属されたイギサを紹介いたします。』

こ・・・この顔はまさか!

『ホン・・・ジュソン・・・か?』

半信半疑の気分で俺は問い掛けた

その問いかけに奴は満面の笑みで一歩前に出た

『皇太子殿下、大変ご無沙汰しております。はい。ホン・ジュソンです。』
『ずいぶん・・・雰囲気が変わったな。』
『はい。警察学校で四年間・・・みっちり鍛えられましたから。本日から東宮にお仕えします。
どうぞよろしくお願いいたします!』

俺が驚くのも無理はない

無駄な脂肪など一切ついていないその体型は、昔のホン・ジュソンを知っている者には

にわかに信じられない変貌ぶりだった

だが顔・・・そして声は間違いなくホン・ジュソンのものだった

『こちらこそよろしく。そうだ!妃宮に紹介しよう。』

俺は電話でチェギョンを執務室に来るよう呼びだした

すぐにチェギョンは、執務室のドアをノックした

廊下でおしゃべりする声が聞こえたからどうやらギョムも一緒らしい

<トントン>
『シン君~失礼しま~~す。』
『しつれいしま~~す♪』

ギョムとチェギョンは共に執務室の中に入ってきた

そして俺の机の前に立っているコイギサに話しかけた

『あ~コお兄さん、こちらにいらっしゃったんですね~♪』

そういった直後・・・その隣りに立つ男の顔を凝視し・・・何かを考えるように何度も首を傾げた

くっ・・・やはり昔のホン・ジュソンと頭の中で一致させられないらしい

『チェギョン紹介しよう。今日から東宮に配属されたイギサだ。』

そう俺が言った瞬間・・・チェギョンは目と口を大きく開いた

『あっ!!』
『ホン・ジュソンです。妃殿下・・・大変ご無沙汰しております。』
『じゅ・・・ジュソン君なの?随分立派になられて・・・』

チェギョンが驚くのも無理はない

『本日からお仕えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。』
『こちらこそ~どうぞよろしく♪』

ホン・ジュソンはチェギョンの横で自分の顔を見上げているギョムに気が付いたらしい

その場にしゃがみ込み、満面の笑みでギョムに話しかけた

『こ・・・こちらがギョム皇子様でいらっしゃいますか。なんて利発そうな・・・』

その直後ギョムが腕に抱いているぬいぐるみに気が付いたのだろう

ホン・ジュソンは顔をくしゃくしゃに緩めた

『こ・・・このぬいぐるみは・・・』
『そうよ。みんながギョムにくださった贈り物の中に入っていたぬいぐるみ。ギョムの宝物なの。』
『こんなに大事に・・・してくださっているとは・・・。
ギョム皇子、これから私は私の命に代えてもギョム皇子をお守りいたします。
よろしくお願いいたします。』

驚いたことにギョムはその小さな右手をホン・ジュソンの前に差し出した

『はい!よろしくおねがいしまぁ~す!』

ホン・ジュソンはその小さな右手をそっと包み込み、感慨深い表情で握手を交わした

恐らくギョムが握手を交わした相手は、ホン・ジュソンが初めてに違いない



春・・・新たな出逢いの時・・・東宮殿はホン・ジュソンや新しい女官を迎え、ますます賑やかになっていった



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さて次回は恐らく・・・ギョン君とガンヒョンの結婚
そして第二子出産かな(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

明日は・・・また炊き込みご飯ネタと
ライブ告知させていただきます(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!


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