Quantcast
Channel: ~星の欠片~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

蒼い月 27

$
0
0

卒業式の日・・・私は窮屈な制服姿で少し動きの鈍くなった身体を揺らしながら職員室へと向かった

この体型ではホン・ジュソン君をはじめとする皇室奨学生達を、デカいなんてとても言えないな

もちろんお姉ちゃんは、そんな私に付き添ってくれた

なぜならお姉ちゃんにとってもお世話になった先生方は、とても馴染みの深い方達だったからだ

私が挨拶に来ると聞いていたのか、先生方は職員室で一列に並んで待っていた

それじゃあ私が途轍もなくすごい人になったようにみたいに感じられた

皇太子妃になっても中身は以前と変わっていない一卒業生なのにね・・・

『校長先生・・・そして先生方、その節は本当にお世話になりました。
私が無事高校を卒業できるのも、先生方のおかげです。
またこちらの学校に受け入れてくださった校長先生、心から感謝いたします。』

お一人お一人に頭を下げ校長先生から皇室マークの入ったハンカチを手渡す

それはとても上質なハンカチだけど、皇室のマークが入っている以外はどこにでもある物だった

それをありがたそうに受け取ってくださる先生方

私の為に遠い先帝の別荘までご足労いただき・・・本当にありがとうございました

そんな思いを口にしながら先生方に挨拶をし終えた時、お姉ちゃんも私の後に続き先生方と

固く握手を交わしていた

『良かったですね。チェ尚宮さん・・・』
『はい。先生方のおかげです。感謝申し上げます。』

お姉ちゃんが挨拶し終わった時、私とお姉ちゃんは並んでもう一度礼をし職員室を後にした


ハンイギサさんの運転する車に向かう間、お姉ちゃんは私に話しかけた

『妃宮様・・・本日はご卒業おめでとうございます。』
『ありがとうございます。これもチェ尚宮お姉さんのおかげです。』

微笑み合いながら仰々しい会話は続いたが、やはり私の中ではチェ尚宮さんなどではなくお姉ちゃんなのだ

頼りになり優しくそして時に厳しいお姉ちゃん

私はこの人が傍にいてくれるなら間違いなく、素晴らしい皇太子妃になれる事だろう

もうすぐ校舎から外に出ようという時・・・図体のデカい男子が並んでいるのが見えた

あれは・・・相撲部五人組だ

『妃殿下・・・』
『ホン・ジュソン君・・・それにみんなも・・・ご卒業おめでとうございます。
其々に新しい学校で学んで、素晴らしい大人になってください。』

ヒョリンの言いなりになり道を踏み外そうとしたみんな・・・今は一点の曇りもない笑顔を浮かべていた

ホン・ジュソン君が一歩前に出て大きな花束を私に向けた

『妃殿下のおかげで俺達は希望に満ちた未来を描くことができました。ありがとうございました。』
『えっ?でもそれは皇太子殿下の配慮で・・・私じゃないんです。』
『いいえ、妃殿下がいらっしゃらなかったら、皇太子殿下の援助はなかったことでしょう。
私達を許していただき、また私達を正しい道に導いていただきました。感謝申し上げます。』

最後は五人全員の大きな声が私に向けられた

『私こそありがとう。その節はみんなに助けていただきました。感謝しています。
素敵な花束・・・いただいて帰ります。』
『『皇太子殿下・妃殿下万歳~!!』』

相撲部の五人に見送られ、私は既にシン君が待っていた公用車に乗り込んだ

『すごい騒ぎだったな。』
『うん。相撲部のみんなが見送ってくれたの。』
『お前の人徳だな。』
『ううん。本当はシン君の人徳だよ。私はきっかけを作っただけ。』
『そんなことはない。それよりチェギョン・・・スカートがきつそうだな。あとは車に乗っているだけだ。
ホックを外して置いたらどうだ?』

うわっ・・・ハンイギサさんもいるのにそんなこと言わないで~~!

『じ…実はもう外してあるの。』
『くっ・・・そうだったのか。まぁ東宮までの辛抱だ。』

シン君は含み笑いをしながら私の腹部に視線を向けた

もぉ!妻に恥をかかせるなんて・・・あとでお仕置きしてやるっ!




イメージ 2




高校を卒業した俺達は、大学入学までの短い春休みを宮殿の庭で過ごすことが多かった

お茶や茶菓子などを持ってピクニック気分で散歩し、東屋に腰掛けて色んな話をするのが日課となっていった

チェギョンは食欲旺盛で、いつも茶菓子を俺の分まで平らげる

ゆとりのあるワンピースがお気に入りで転ばないようにとちょこちょこ歩くのだが、

そんな姿が俺もチェ尚宮も心配で仕方がない

『シン君~今日のおやつはトッポギだよ。コイギサさんにお願いして材料を買ってきてもらったの。
私が作ったんだよ~~♪食べよう~♪』

東屋の座席に小さな重箱に入ったそのトッポギとやらをチェギョンは広げた

『お前の手作りか?』
『うん♪』

美味しそうではあるが・・・真っ赤だな

『美味しいよ♪いただきま~~す♪』

そのトッポギとやらを自分の口に入れようとしていたチェギョンの手を、俺は捕らえると自分に向け

それを横取りした

妊娠中の妻がどんなものを食べようとしているのか、しっかり監視する義務が俺にはある

しかし・・・すぐに後悔した

か・・・辛い。ひょっとしてこの赤いのは唐辛子か!!

か・・・辛すぎる。俺はチェギョンが注いだ冷茶を取り上げると一気に飲み干した

そしてチェギョンに苦言を呈す

『チェギョン・・・こんなに辛い物は妊娠中の身体に良くない。食べるのはやめなさい。』
『えっ?だってチェ尚宮お姉さんに味見してもらって、あまり辛くないように唐辛子を控えめにしたんだよ。』
『いや・・・これはお前には辛すぎる。』
『私だってさっき味見したも~ん。全然辛くなかったも~~ん!』

チェギョンは俺の言うことなど聞かず、トッポギとやらを口に運んだ

『ほら・・・全然辛くないじゃん!もぉ~シン君には二度と作ってあげない!』

なに?これを辛くないというのか?お前の舌は辛いの感覚が麻痺しているんじゃないか?

だが・・・折角作ってくれた激辛トッポギを妊婦のチェギョンに全部食べさせるわけにはいかない

『俺が食べる!』

俺は果敢にもそのトッポギを必死になって食べた

これも妊娠しているの妻への労わりだ

そして何杯も冷茶を飲む

トッポギと冷茶で腹が膨れ、その日俺は夕食がほとんど食べられなかった・・・



四月に入り俺達は同系大学に入学した

高校から持ち上がり式で入学した者がほとんどで、俺達の周りには高校の時と変わらないメンバーが常にいた

もしかして俺が距離を置いたせいなのか、自然とカン・インだけは俺達の仲間に入ろうとはしなかった

ひょっとしてチェギョンの昔の事件に責任を感じているのかもしれないな

チェギョンは高校時代いつも守ってくれた相撲部の連中がいなくなり、少し寂しそうにしていた


順調に大学生活を送る俺達・・・チェ尚宮だけは常にチェギョンの傍にいていつも冷や冷やさせられて

いるようだがな

チェ尚宮の言う事ならチェギョンは素直に聞くだろう

俺はチェ尚宮に絶大な信頼を寄せていた



大学も夏休みに入り、いよいよチェギョンは動くことも大変そうなほど大きなお腹を抱えるようになった

さすがに臨月の妊婦を公務に同行させることはできず、俺はチェ尚宮にチェギョンを託し日帰りの公務に出かけた

まだ出産予定日までには半月ほどもある

きっと大丈夫だろう

そんな風に安易に思っていた時・・・俺のスマホが鳴り響いた

発信者は・・・チェ尚宮だった


一瞬嫌な予感が過った俺は、すぐにその電話を取った

『チェ尚宮・・・妃宮になにか・・・』
『殿下、妃嫌様が破水され・・・ただ今王立病院に入院いたしました。』

破水?つまり・・・もう生まれてしまうという事か?

『まだ予定日には早いのに・・・生まれてしまうのか?』
『はい。破水してしまったらもう出産を促すほかないそうです。』
『だが・・・今朝、そんな兆候は何もなかったのに・・・』
『それが・・・妃宮様は安産体操なるものをされて・・・少し無理をなさってしまったらしく・・・破水されました・
私の監督不行き届きでございます。申し訳ございません!』

なにっ?あの馬鹿・・・なんてことを・・・

『いや・・・チェ尚宮のせいではない。公務は既に終わったから急いで王立病院に向かおう。』
『はい。お願いいたします。』

っつ・・・なんてことだ

いくら急いで王立病院に到着するのは夜になってしまう

それまで・・・待っていてくれるだろうか

お腹の中の子は辛抱してくれるだろうか

できる事なら生命の誕生に立ち会いたい

生まれたばかりの我が子を一番に抱きたい

だが・・・無情にも車がソウル市内に入った時・・・チェ尚宮からの電話が再び鳴った


イメージ 1


ということで、どちらが生まれたのかは
次回までのお楽しみ~❤

しかし暑いですね・・・
管理人は明日、気分転換に
庭木の剪定をします。
誰か手伝って~~~!

【追記】
お友達のゆぱさんが
24話と25話にイラストを描いてくださいました❤
とっても素敵なイラストです。
良かったら見て行ってくださいね~❤







Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>