それは夏休み直前の事だった
何やら教室の後方に楽しそうなポスターが貼られていたのだ
『ガンヒョン・・・サマーキャンプって?』
『あぁそれはね・・・生徒たちの親睦会みたいなもので二泊三日のキャンプよ。
キャンプといっても寝泊まりするのはちゃんとしたコテージ。そうだ!チェギョンも行かない?』
『えっ?』
ガンヒョンからそう言われた瞬間、顔が綻ぶのが自分でも分かった
『だってアンタ・・・修学旅行だって行ってないでしょう?』
修学旅行どころか学校さえ行っていなかったよ。つい最近までね・・・
私はなんだかワクワクと胸が躍る自分に気が付いてしまった
でも・・・
『でもガンヒョン・・・シン君も行くのかな?』
『皇太子?皇太子は無理よ~。警備上の理由で修学旅行にさえ行けなかったんだもの。
それに特進科は参加しないのよ。
あっ・・・でも今やアンタも皇太子と同じか・・・』
『ん~~やっぱダメかなぁ・・・』
『皇太子に一応聞いてみたら?』
『うん。』
みんなと二泊三日のキャンプだなんて・・・この先もう絶対に経験できない
枕投げとか~一緒に食事作ったり夜遅くまでおしゃべりしたり・・・そんな時間はもう二度と持てない
行きたい・・・行きたいなぁ
でもシン君はきっとダメだと言うだろうな
私には彼の返事がわかるような気がした
休み時間・・・ホン・ジュソン君が私を訪ねてきた
『チェギョン・・・お前はサマーキャンプに行くのか?』
『ん?ん~~~行けないんじゃないかな・・・』
『お前の本心はどうなんだ?』
『もちろん行きたいけど・・・きっと難しいと思う。』
『そうなのか・・・』
『うん。きっとそう・・・』
実際私にはシン君を説得できるだけの理由も大義名分もなかった
ただ友達と過ごせるこんなチャンスはもうないというだけでは、シン君を説得する事なんかできやしない
皇太子の婚約者って言うのも・・・ホント大変だなぁ・・・
妙なところで気を遣わないとならないんだもの
昼休み・・・私はシン君にサマーキャンプに行きたいと言えるのだろうか・・・かなり不安だ
その日の休み時間、ファンと話をしていた時・・・ギョンが俺を呼んだ
『シン~お客さんだよ~♪』
皇太子の俺を呼び出すなんて・・・一体何者だ?
そう思いファンとの話を切り上げ、渋々教室から出ていくと・・・あろうことかそこには相撲部のホン・ジュソンが
立っていた
ホン・ジュソンと顔を合わせるのは、皇太子ルームに呼びつけて以来だ
しかし・・・相変わらず圧迫感のある体型だな
『ホン・ジュソン・・・なにか?』
『皇太子殿下…今日はお願いがあって参りました。』
おいおい・・・別に皇室奨学生だからといって、そんなに遜らなくてもいいじゃないか!
普通に話せないのか?まるで俺が相当威張っている皇太子に思える
『お願いとは?』
どうせ相撲部の活動資金をもっと欲しいとかだろう?
『シン・チェギョンの事です。』
『チェギョンの?なんだ?』
チェギョンの名前を出され俺は顔を顰めた
チェギョンの事でお願いだなんて・・・チェギョンは俺の婚約者だ!お前に言われる筋合いはない
『チェギョンのサマーキャンプ参加を許可していただけませんか?』
『サマーキャンプ?なんだ?それは・・・』
映像科にそのようなイベントはないはずだ。恐らく美術科だけのイベントなのだろう
『夏休み中に二泊三日で、サマーキャンプが開催されるんです。』
『美術科の生徒だけなのか?』
『いえ、映像科にもポスターが貼ってあるはずです。』
『だがうちのクラスにはない。』
『恐らく特進科は対象外なのでしょう。』
『そうか。それで・・・そのキャンプは生徒全員参加なのか?』
『いえ。希望者だけです。』
俺は小さく溜息を吐きながらホン・ジュソンを諭した
『ホン・ジュソン・・・シン・チェギョンの立場をわかって言っているのか?』
『はい。皇太子殿下のご婚約者です。』
『参加を許可したら、大勢の護衛を同行させなければならない。』
『そんなの要りません。俺達相撲部がチェギョンを守りますから・・・』
『っつ・・・お前たちに責任が採れるのか?チェギョンは国母になる女だ。それがわかっていてそんな無謀なことを
お願いに来たのか?』
『無謀なのは百も承知です。でも・・・チェギョンは学校にさえ、三年も通えなかったんです。
修学旅行だって行っていません。』
『修学旅行なら俺も行っていない。』
『皇太子殿下は皇太子として生きてきました。でもチェギョンは元々庶民です。友人との楽しい時間を
婚姻前にどうか・・・過ごさせてあげてください!』
腰を垂直に曲げ俺にお辞儀をするホン・ジュソン
それじゃあまるで俺が一般生徒を苛めているようじゃないか!
『頭を上げろホン・ジュソン・・・』
『では、お許しいただけるのですか?』
『前向きに・・・検討する。』
『あ・・・はい!』
俺の快諾を得られなかったホン・ジュソンは、あのいかつい肩をがっくりと落として去っていった
やはりこれじゃあ俺が悪者のようだ
昼休みになるまで俺は悩んだ
一度ならず二度も生命の危険に瀕したチェギョンだ
どんな危険が潜んでいるかわからない
俺はそのサマーキャンプについてギョンに問い掛けた
『なぁギョン・・・サマーキャンプって知っているか?』
『うん、知ってるよ~♪学校行事だろう?』
『なぜ特進科は参加しないんだ?』
『特進科はほら・・・お勉強が忙しいだろう?だから参加資格がないんだって。
俺だってできる事なら参加したいよ~~!』
『場所はどこなんだ?』
ギョンの告げた場所は先帝の別荘がある山の隣の山だった
繁華街が近くにあるわけでもなく道は一本道で、麓に検問を設ければ不審者は絶対に入ってこられない
どうするか・・・
確かにチェギョンは三年もの長い間、学校にも通えず友達との交流もなかった
その上秋には婚姻が決まりそうだ
今行かせてあげなければ、チェギョンは一生後悔することになるかもしれない
そう思うと非常に迷った
昼休み・・・いつも通りチェギョンとガンヒョンがやってきて、食事を始めた時・・・俺は話を切り出した
『チェギョン・・・サマーキャンプに行きたいのか?』
『えっ?・・・・なぜそんなこと言うの?』
その途端チェギョンに目配せをするガンヒョンの様子で、俺はチェギョンの気持ちが十分すぎるほど理解できた
『行きたいんだろう?』
『う・・・・うん・・・』
申し訳なさそうに答えるチェギョンに俺は告げた
『行ってきたらいい。』
『えっ?行ってきてもいいの?』
『あぁ。ただし・・・チェ尚宮とコイギサを同行させる。』
『え~~~~っ・・・・』
『なんだ?不満か?』
『不満ってことないけど・・・』
『護衛の一人もつけず、参加を許すと思ったか?この二人だったらお前も気を許せる人たちだ。
文句はないだろう?』
『うん。まぁ・・・』
本当は山の入り口に数名、イギサを待機させるがな
『秋になったら婚姻が控えている。今のうちに楽しんできたらいい。』
『うん。』
『ガンヒョン・・・くれぐれもチェギョンを頼んだぞ。』
『任せておいて。アタシがしっかり見張るから。』
きっと相撲部の連中も鬱陶しいくらいにチェギョンを見張ってくれるだろう
『シン君・・・本当に行ってきてもいいの?』
『あぁ。行ってこい。』
懐の大きいところを見せた俺・・・チェギョンハ食事の最中だというのに、俺に抱きついた
そういうのは二人の時にしてほしい・・・そう心の中で毒づきながらも、俺達の婚姻は刻一刻と近づいているのだ
焦る必要などどこにもない
もうチェギョンを狙うやつはいないのだから・・・
今日は抑止うtの網戸が破れてしまった事に気が付き
網戸を張り替えようと・・・すべて外した後で
網戸の網が・・・微妙なサイズしかないことに気が付き
なんと・・・5センチほど二重になった網戸を
一時間かけて張り替えたアタクシ。
張り替え途中・・・ふぅちゃんはその上をのしのし歩くし・・・
ぴんと張っていない網戸だけど何とか完成。
でも・・・その二重部分からGさんとかMさんがいらっしゃると怖いので
明日早速網戸の網を買ってこようと思うのであった。
ぶみぃ・・・